漢字一文字の旅 第三巻
六の二 【黒】
【黒】は嚢(ふくろ)の中のものを下から火で焦がして黒くすることだとか。
「白」は白骨化した頭蓋骨の形だから、これとは随分と成り立ちが違うようだ。
そんな【黒】、宇宙にはブラックホールがある。
重力崩壊、すなわち星が自分の重力に耐え切れず、どんどんと自分の重力で収縮して行き、その果てにブラックホールとなる。
それは何もかもを吸い込んでしまう。そして、そこから時間も光も抜け出せず、一見すべてが止まったように見える。
すなわちブラックホールの一瞬は我々の世界で永遠に匹敵する。
裏返せば、我々の方からブラックホールを眺めると、すべてが止まったように見えるのだ。
そんな恐ろしいブラックホール、一体、どれくらい収縮したらそのような世界になるのだろうか?
答えは――地球が直径18ミリ以下になれば、ブラックホールになると言われてる。
スマートボールが直径20ミリ、パチンコ玉が11ミリ。
地球がこの程度の球になれば、ブラックホールになるのだ。
随分と息苦しいし、また真っ暗。
まさに地獄だ。
いずれにしても【黒】という漢字、そんな暗黒世界へと人たちを誘惑する。
くれぐれも吸い込まれないように。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊