漢字一文字の旅 第三巻
三の六 【窓】
【窓】、元の字は「窗」、ウ冠の屋根に「まど」を開けた形だとか。
そんな【窓】に、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリングが考案した割れ窓理論がある。
割れてる窓を放置しておくと、その内誰も気を遣わなくなり、やがて他の窓もすべて割れてしまう、というものだ。
つまりちょっとしたことであっても、すぐに対策を取らないと住民のモラルは低下し、軽犯罪が増える。
そして凶悪犯罪が起こる。
アメリカの都市はこの理論に従い、軽微な秩序違反を取り締まり、成果を上げているとか。
この割れ窓理論、なにも犯罪撲滅だけのためではない。
東京ディズニーランドでは、清掃や修繕、そして保全を徹底的に行い、従業員や来客のマナーを向上させることに成功しているとか。
他にはこんな【窓】もある。
「essere amato amando」
ペンリン城の一室の窓に書かれてある落書きだ。
ラテン語と思われていたが、実はイタリア語、意味は「愛する限り愛されたい」ということ。
一体誰がこんな熱い想いを書いたのだろうか?
さらに調査すれば、1880年頃、実業家の娘・アリスがこの城に住んでいた。
アリスは庭師の男性と恋に落ち、父にこの部屋に幽閉された。そして男と別れさせられた。
まさに悲恋だ。
しかし、アリスはその思いを【窓】に、「愛する限り愛されたい」と走り書きした。
乙女の恋のせつなさが150年の時を超えて伝わってくる。
そんなあれやこれやの【窓】、近年になってからは「Microsoft Windows」になったりで、古今東西大活躍の漢字なのだ。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊