漢字一文字の旅 第三巻
三の四 【静】
【静】、「青」と「争」が組み合わさった漢字。
「青」は青丹から作られた絵具、器物を聖化させる。また「争」は鋤を持つ形。
鋤を青色の顔料で清めることにより虫の害を防ぎ、安らかな実りとなる。ここから「やすらか、しずか」の意味になったとか。
こんな【静】、「一人静」という花がある。
イメージとしては……大変さびしそう。
5月頃に、日本の各地の山地の日陰に高さ20センチほどの茎を直立させ、穂状に白い花を咲かせる。
実に可憐だ。
名前の由来は静御前から付いたそうな。
確かに吉野の山で義経と別れた静御前、それ以降一人となった。
そんなヒロインをイメージさせる花なのだ。
では、この「一人静」を季語にして、俳句/和歌でもあるのかなと調べてみたが見つからない。
これはひょっとすると、「一人静」を使えば、大穴俳句になるかもと一句詠んでみた。
いずこにか 香りほのかに 一人静(ひとりしずか)
めちゃくちゃ下手だけど、これぞ世界初の季語「一人静」の俳句だぞ。
と、騒ぐのは【静】に失礼かな。
作品名:漢字一文字の旅 第三巻 作家名:鮎風 遊