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愛道局

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「さあ、今度は貯愛タンクを見ましょう」
 長谷川女史の言葉で、椅子を動かす音と立ち上がる音が続いた。山本は頭の中の思いを追い出して立ち上がった。
 長谷川女史の後に続いて一同は少し大きめの扉をくぐった。山本は急に自分が小人になったような感じを受けた。わーっと他の参加者が声をあげた。巨大倉庫というのだろうか、大きなドームかもしれない。天井は遥か遠くに見えた。そして多数の貯蔵タンクがある。
 あの銀色の蛇からここに繋がっているのだろう。タンクは二本の銀色の太いパイプがついているので、当然「入」と「出」であろう。タンクには半螺旋状に階段がついていた。長谷川女史はその階段を登り始めた。皆がその後に続く。山本はつい女史のお尻に目がいってしまった。階段を登るたびにそれは左右にゆれて動く芸術品に思えた。ずうっと見ていたいと思いがあったが、すぐに階段の終点に着いてしまった。
「このタンクだけが見学用に透明なガラスの蓋で覆われています。どうぞご覧になってください」
 それぞれが感想をもらすざわめきの中、山本も中を覗いてみた。タンクの直径はプールの短い方の長さぐらいだろうと推測した。中は虹色の雲のようでかすかに動いている。「おーっ」という誰かの声、「成る程」という声、「きれいっ」と女性の声がした。

「この色が重要なポイントです」と女史が言った。山本は女史に視線を向けた。心なしか女史の顔がうっとりとした表情に見えて、ずきっとした。あわてて視線をタンクに戻す。
頭の中には女史の表情が残ったままだ。それを振り払うように他の参加者の顔を見た。皆タンクの中を覗いている中で、格言男が女史に見とれている。ああやはりと山本は思った。長谷川女史の今の顔は男を惑わせる表情だ。
「やはり見てきれいに思えないものはいいものではありません。少しくすんだ色だった場合、色別に分けた、そうですねえ、原液と言った方がわかりやすいですね。その中から色の鮮やかな原液を足して整えます」
 長谷川女史の説明に「やはりね」、「ふーん」という声があがった。
「特別な人はオーラが見えるということを言いますが、その人がいう色と似ているらしいので、オーラのようなものかもしれませんね」
 その言葉に「へえー」とか「ほう」という声が上がった。
 山本もタンクの中を見ながらオーラとはこういうものなのかと思った。それにしても人をみるたびにこんな色がついて見えたら、日常生活の邪魔にならないのかなあと思う。
「さあ、あとは同じものが並んでいるのですが、全体像を把握するために向こうの出口まで歩きましょうか」

作品名:愛道局 作家名:伊達梁川