初めてのお見合い
顔の造作が如何にも日本女性らしいので親しみをすぐに感じた。小顔なのだった。それだから美しいだけではなく、極めて可愛らしい。その眼は大きいという印象であり、その美しさは比類のないものであった。吸い込まれそうな澄んだ美しい眼という表現は、美里の眼意外にはあてはまらないと、下山はその広いホテルのロビーに居る全員に向かって主張したくなる。
そして、下山を最初に喜ばせたのは彼女の非常に美しい脚だった。これ以上の脚は見たことがないと、下山は思った。かつて日本女性の脚が大根足と呼ばれていた時代は遠い過去になったことを悟らせる美しさ、スマートさがそこにはあった。彼女の脚だけを写真に撮って見せたなら、誰でも外国人の脚だと信じ込むに違いない。そんなことも考えた。
「こんな、半端じゃない美女が、なぜ女優をやめてしまったのか、不思議ですね。世界の七不思議ですよ。不安です。ほら、昔テレビでやってたでしょう。ドッキリカメラ」
下山の真剣な表情は相変わらずだった。少しは笑顔を見せないと嫌われてしまうのではないかという危惧にさいなまれている。しかし、笑っている場合ではないとも思う。
「もっと派手な顔じゃないと、舞台では評価が低いんです」
「舞台女優だったんですね。で、その評価の低さが私に幸運を運んでくれたんですか」
「……わたしの外見は合格みたいですね。じゃあ、問題は性格だけかも知れませんね?」
美里は如何にも嬉しそうな表情を見せてそう云った。
「性格ですか……」
つづく