蛇兎賭
「蛇兎賭」2日目
俺は気づいたら控室みたいなとこに寝てた。なんとそこに親父がいた。
「お、親父ィ!なんでここに!?」
起き上がり叫ぶと殴られて元の寝たままの形になった。
「黙れ!このアホ息子が!!てめぇみたいなガキがなんでこんなところに居るんだよ!?下手すりゃ死ぬんだぞ?」
「・・・でもよぉ、親父も知ってんだろ?お袋の借金。1000万。それをどうやって返すんだよ・・・しかも有難いことに返す日は1ヶ月後だぜ?これが終わるころには借金取りに追われる時だ。だから死ぬか生きてその場で返す。賭けだ」
「お前は何も分かってないな!いいか!?よく聞け!このゲームは絶対俺かお前のどっちかが死ぬんだぞ!?仮に俺が生き残ったとしてもお前は死ぬし、お前が生き残っても俺が死ぬ!最悪どっちも死ぬというケースもあるんだ!それにお前は母ちゃんに言われなかったか!?大人になってもギャンブルするなって!」
「でもどうやって借金返すんだよ!バイトでもしろってか!?無理だぜ、バイトなんかじゃ残りの900万返せねぇよ!だから俺はここにいる!お袋の借金返すために!」
「このバカ息子が!勝手に死んでろ!」
そのあと親父は部屋を出て行った。それに入れ違えるように1人の女子が入ってきた。見た目は俺とタメ、髪は黒のストレートで背中まで綺麗にまっすぐだ。ただ前髪が少し長いのか、前は髪留めで止めてる。
「あの…私神馬莇(じんばあざみ)と言います」と自己紹介してきた。なので俺も自己紹介する。
「あ、俺伊集院來斗。よろしくな」
聞くところによると、彼女もお母さんも交通事故で亡くなったらしい。
「神馬さん、俺、ほんとはやなんだ。もう、これ以上やりたくない。俺死にたくないけど人が死ぬのもやだ。昨日、俺が蛇兎賭に勝ったけど、彼女が電気でやられてる時何も言えなかった。このゲームで死ぬっていうことを言われた時も何も言い返さなかった。俺は・・・弱い、人の生死が係ってるのに、俺、何も言えないんだ。多分まだ頭の中整理できなかったって言えば責められることないと思うけど、俺はそんな言い訳したくない……いや、すいません、なんか急にこんなこと語りだしちゃって」
「いや、そのほうがいいですよ。ストレスや自分の思ったことを吐き出すのは自分のためになります。私、実はカウンセリングをやりたくて…でもここに来たらそんなことも関係ないですね。下手したら死んじゃいますから…」
そのあとしばらく沈黙が続く。その間は俺は安心できた。俺以外にもこういう人がいるってことがなにより俺の安心感の理由だ。
[第2試合が終了しました。控え室、厨房、食堂、各自の個室に居る方は至急、鑑賞室に来てください]
とアナウンスが入る。俺らは立ち上がり、その鑑賞室とやらへ向かう。俺は分からないので彼女に案内してもらうと、とっくにみんな集まっていて、視線が俺らに集まる。その視線に俺の親友までもいた。
「來斗?お前、伊集院來斗か?」
「お前は、耀?大磊耀(だいらいあきら)?」
俺は言葉を失い、昌も口をあんぐり開けている。と彼女が隣から聞いてきた。
「あの…お知り合いですか?」
「あぁ、というか俺の親友だ。彼は大磊耀と言って、同じ万両高校の生徒さ」
すると耀が隣の女性に話しているのを見た。しかもその女が俺の知り合いだと知らずに。
耀の説明が終わる前にその女が近づいてくる。
「來斗君ー!お久しぶり~!覚えてる~?渡原魅峰(わたはらみみね)だよ?」
「あぁ、魅峰か。久しぶり、5年ぶりか?」
「あら?そちらの可愛い人は?」
魅峰は神馬さんを指差し、にっこり神馬さんに笑いかける。
「はじめまして、私、神馬莇と言います」
「莇さん~よろしくお願いします」
「いえいえこちらこそ」
こんな会話ですら平和に思えてくる。そんな会話もつかの間、1人の男が強制終了させる。その男は髪がぼさぼさで背は高いが猫背で、メガネが若干曲がってて、なにより臭い。きっとホームレスなのかもしれない、だがどうやってこんな高額な賭けに参加できたのだろう。
「2人とも静かに!」
[結果を発表します。勝者、渡辺正様、敗者、伊井夢斗様、お疲れさまでした。では、明日の対戦の組み合わせを発表します。神馬莇様、出井太一様です。では今呼ばれた方は明日、朝9時に控室にお集まりください」
アナウンスが終わると、彼女が立ちながら声も出さずに泣いていた。
そして次の日、彼女は蛇に噛まれて泣きながら死んだ。
「蛇兎賭」2日目終了