きらめき
【広野雪奈が拾ったノートより抜粋(判読不明が多い)
ノートには放射性物質が付着していたため除染】
戦局に望みなし 利害関係が複雑に絡み合っていた国々がいよいよ大きく二分され、殺し合いが
レーダーで捕らえることも出来ない無人の殺人飛行機が飛び交う都会を離れ、親族全員山中に逃れる
高い山に囲まれ、簡単には登れない穂高山中
この美しくも険しい北尾根を見ていると、おろかな人間の存在がバカらしくなる。
なぜに人は憎しみを募らせ、殺し合うのだろうか
己の遺伝子を残そうとするがための いかんともしがたい習性
この地球上に100億もの人々が生きようとするのは、無理なのだ。
食糧問題、飲み水の確保、限られた土地とエネルギー資源の奪い合い
2042年夏 7月か8月と思う
今日得た情報
最も老朽化が進んでいる浜岡原発に核弾頭ミサイルが撃ち込まれ、爆発し、核物質が多量空中飛散
穂高山中まで達するだろうか
想定外の事態が発生しているらしい
ミサイルで破壊されたのは浜岡原発だが、敦賀、美浜、大飯原発が次々に爆発しているとのこと
中性子線による強大なエネルギーが誘発しているものと推測
日本にある原発だけでなく、中国やロシア、韓国、それがヨーロッパの原発へと爆発が連動していった
シミュレーションによると太平洋側からの中性子線と日本海側からの中性子線が、ものすごいエネルギーを内在させて衝突、
時空が歪み
2013年安部内閣
広野雪奈が拾ったノートは極秘文書とされ、公開されることはなかった。
地下深くに都市シェルターを密かに建設する計画が、わずかの閣僚の話し合いで決定された。表向きは、核廃棄物の最終処分地として、強引に決定したのである。
又、JAXAによる火星輸送ロケット開発の強力な推進と同時に、コロニー建設チームが発足した。
国民の目は、経済浮揚策及び政治家の失言に注がれるように画策されていた。
1999年の東海村臨界事故から目をそらせ、反原発運動が高じないように、そのまやかしの安全性を信じ込ませるために、殊更に2000年問題を大きく取り上げ、国民の意識をそらせたように。
穂高岳周辺の入山は「地震崩落」という理由で禁止され、広野雪奈たち3人の被曝のことはいつしか忘れ去られていき、この恐るべき出来事は、ごく一部の、直接関与した人のみの記憶にとどまるだけのものとなっていった。
ゆえに、この出来事が報道されることはなかった。