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シナリオ『CUBE』第2幕「インサイド」

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   舞台上にはひっくり返った箱がある。そこに教師が歩いてくる。彼は勤め帰りでひどく疲れている。
   箱のドアを開けて、教師は自分の部屋に帰ってくる。家にはソファがあり、彼は荷物を放り出し、そこに座り、ゆっくりと長い息を吐く。そして上着を脱いで、ネクタイを緩める。
   しかし斜幕の裏にいる幽霊を見て驚き固まる

幽霊1 (同時に)お帰りなさい、先生
幽霊2 (同時に)お帰りなさい、先生
   教師悲鳴を上げる。暗転





   明転、幽霊1が部屋の中央にいる教師を攻めている。幽霊2は幽霊1をなだめている。教師われ関せずとメールをしている。

幽霊1 先生、どういうことなんですか! いい加減はっきりしてください!
幽霊2 もう、仕方ないじゃない。先生の癖、今にはじまったことじゃないじゃん?
幽霊1 でも、これで5人目よ、いくらなんでもあんまりじゃない!
幽霊2 そんなのいい加減慣れなさいよ。それに考えてみ?あたしらはその五人よりぜんぜん特別なんだよ。
幽霊1 特別・・・?
幽霊2 そ、特別。あたしたちほかの女みたいに、先生に捨てられない。
幽霊1 ええ。
幽霊2 そのままずっと、先生が死ぬまで一緒の存在。ね? 特別でしょ。
幽霊1 ・・・だからって許せないわよ。五人もなんて、そんなの。
幽霊2 もう、しょうがないじゃん? ほれた弱みってやつだよ。
幽霊1 だとしてもよ! それに特別だっていうならあなたの方が先に死んでるんだから、そっちの方が特別でしょ?
幽霊2 ええ? そんなことないよ。
幽霊1 ああ、もう、本当にあなたのそういう所がむかつくわ。
幽霊2 ごめんね?
幽霊1 ・・・ああ、もう先生! ホントにはっきりしてください! いったい誰が好きなんですか? ねえ、先生!
教師  ああ! もううるさいな、集中できないだろう?
幽霊2 なに、またあの子にメール送ってんの? 随分と熱心だね、先生?
教師  ・・・なんだよ。
幽霊2 別に。
教師  ・・・なあ、お前らって一体どうやったら成仏してくれるんだ?
幽霊1 ・・・先生私たちに成仏してほしいの?そうなの? ねえ?
幽霊2 もう、少しは黙ってなよ、先生に嫌われちゃうよ?
幽霊1 ・・・(なにも言わずにふさぎ込む)
教師  なあ、もういいだろう。十分じゃないか? 俺は確かにひどいことをした。けれど、なにもこんな形で報いを受けなくてもいいじゃないか。こんな、非現実的な・・・。
幽霊2 やだ、先生。なに言ってるの? 今ここにあるのが現実でしょ?
教師  ふざけるな、こんなもの現実だったらあまりにもひどすぎるじゃないか。そんな、そんな、殺した奴が幽霊にでてくるなんて、そんなベタなこと、あっていいはずがないじゃないか! これは現実だぞ!
幽霊2 いやあ、そんなこと言われてもねえ?そもそもが自業自得じゃん?だって、私たち殺してる訳だし?
教師  違う、あれは事故だ。だってそうだろう? あんなことになるなんて誰も思わないじゃないか。あれは俺のせいじゃない。
幽霊1 ・・・そうよ。あれは先生のせいではないよ。私たちのせい。私たちが馬鹿だったせいよ・・・。
幽霊2 ・・・そうだね。死んじゃったのはあたしたちのせいよね・・・。ごめんなさい。
教師  ・・・いや。
幽霊2 でもね、ただ先生のことが好きなだけなの。だから、成仏できないだけ。そうでしょ?
幽霊1 (うなづく)
教師  ・・・いや、俺のほうこそすまな・・・
幽霊2 なーんてね。そんな単純なわけないじゃん?先生頭悪いなー。
教師  おまえ!
幽霊2 ま、すきって言うのは本当よ?
幽霊1 ・・・私は本当ですよ。先生。そこの馬鹿女の言うことなんて信じられない。
幽霊2 ねえ、そこの馬鹿女って誰のこといってんのかな?
幽霊1 ごめんなさい、私ったらつい正直者だから。
幽霊2 そっかあ、正直者だからかあ。ホント死んじゃえばいいのに
幽霊1 もう死んでますー。大体ね、あんたみたいなやつの好きなんて言葉これっぽちも当てになりゃしないわよ。
幽霊2 はは、ホントむかつくなあ、この人。ホントもう一回死ねばいいのに。
幽霊1 なんですって!!
幽霊2 なーに?
教師  うるさあああああい!!

   そこにチャイムの音が鳴る。教師、はっとして振り向く

教師  ・・・いいか、あの子がきたとき絶対黙ってろよ? そうじゃなかったらお払いでも何でも呼んで、さっさと成仏させてやるからな。
幽霊2 はっ!呼べんの?先生に。ばれちゃうよ? あたいたち殺したこと。
教師  ・・・くそったれが!

   教師、ドアからはける。

幽霊1 ねえ。
幽霊2 なんだよ。
幽霊1 あんま、挑発するとさ、本当に消えちゃうよ。
幽霊2 ・・・大丈夫だよ、消せやしないよ。あたしたちを。
幽霊1 ・・・そうだね。消せやしないね。だって、あの人は・・・

    幽霊1と2、扉とは反対側の面から、箱の外へ降りる。そして、お互い箱の壁に寄りかかるように、それぞれ反対側をむいてもたれかかる。
    そこに、教師と女生徒が入ってくる。

女生徒 おじゃましまーす。
教師  (ソファを指差しながら)そこにでも座ってて今お茶入れてくるから。
女生徒 あ、はい! 
教師  まあ、全然リラックスしていていいから。
女生徒 はい、どうもすみません。なんか、先生の家まで押しかけちゃって
教師  いいって、いいって。ちゃんと話、聞きたいし、何よりお茶でも飲んですこしまったりした方が話しやすいだろ?
女生徒 ・・・はい。そうですね。
教師  ああ、じゃあ少し待っててね。

   教師、ドアからはける。斜幕に照明イン。

幽霊2 ホント私たちのと同じ手口よね。
幽霊1 甘い言葉で気を許させて、
幽霊2 心にすき間作らせて
幽霊1 自分の入れるちょっとしたすき間。
幽霊2 必要とされる弱い心のすき間。
幽霊1 それにどんどんどんどん
幽霊2 漬け込んでいく・・・。

   教師、お茶を持って入ってくる。

教師  やあ、ごめんね。待たせちゃったね。どうぞめしあがれ。
女生徒 はいじゃあ、いただきます。

    女生徒、お茶を飲もうとするがあとすんでのところで飲まないで壁にかかっている写真を指差す。

女生徒 先生、あれって何ですか?
教師  あ、ああ、あれは2年前の修学旅行の時にとった写真だよ。よく取れてるし、額に入れて飾ってあるんだ。
女生徒 へえ、でも、先生すごいモテモテじゃないですか。あんなに女の子に囲まれて。
教師  いや違うよ、あれは当時赴任してたのが女子高だったからだよ。
女生徒 ああ、なるほど。でも、それにしてももててますよね。
教師  女子高では男の先生は珍しいからね。
女生徒 ふーん、そっかあ。(お茶を飲もうとする。)
教師  ああ、そうなんだよ。

   そこで、照明が変化して幽霊1の方にスポットが当たる。

幽霊1 ええ、先生はとてももてた。優しくて、話もちゃんと聞いてくれて、みんなの憧れの先生だった。そんな先生に、私みたいなやつがあの日なんで部屋に誘われたのか。全然わからなかった。