和尚さんの法話 「仏教と占い」
だけども、夢がそうだったのならやりなさいと。
それでその人は寺の境内に夜店を出したんです。
和尚さんの寺のお婆さんが、それを見て、なにをしてるのやと。
その人は、家賃が払えないで追い出されてしまいましたんやと。
それなら寺に開いた部屋があるのでそこを使いなさいということになったんです。
それでそこへ住み着くことになったんですね。
ところがその部屋の家賃も一度も払わずだったそうですが、夢見地蔵さんというのはそんなことで夢で知らせてくれるお地蔵さんなんですね。
夢見地蔵さんはお地蔵さんだけではなく、お不動さんであろうが観音さんであろうが、何方も通力を持ってるのだから出来るんですよね。
だから遠い所の人は近くの観音さんなりお不動さんへ頼みなさいということです。
これも以前にお話ししたと思いますが、主人が病気で、医者は手術をしたほうがいいと言うのですが、したほうがいいでしょうか、しないほうがいいでしょうかと、その医者は手術をしても十人が十人皆が治るとは言ってくれないんだと。だからちょっと迷ってるんですけど、どうしたらよろしいかという方がいて、和尚さんは、これは手術はしないほうがいいのと違いますかと。
然しお医者さんはどういう意見ですかと聞いたら今言ったように、病気はお医者さんが第一やから、お医者さんは医学の立場からそういう診断をしてるのだったら、和尚さんはそうしなさいとはよういわんと。
その人は清水さんの下に住んでるそうで、まだその頃は観光になってない時分だったんですね。それで清水さんへね、観音さんもいらっしゃるし、お不動さんもいらっしゃいますから、一所懸命に手術したほうがいいのか、しないほうがいいのか、どうか夢でお告げを下さいと、頼みなさいと。
そうしましたらその人は、私は信仰は軽蔑はしませんけど、心から拝んだことがないんだと。そんな私が今こうなったからといって頼んでも聞いてくれないんじゃないかというわけです。
なければ元々ですから、然しまあ一遍なさってみなさいと。
それでしたそうです。
そうした人は、した本人が夢を見てるそうですが、ところが奥さんがしたんですけど、夢は病気のご主人が見たらしいのです。
それでその夢をどう判断したらよろしいのでしょうかと言って、夢の話しをもってきたんです。
櫓で漕ぐ小さい船に二人で乗っているのですが、その舟には櫓が無いんです。ですので、波に任せるしかないわけです。
そういう状態で、ちょっとずつちょっとずつ海岸に近付いていて、海岸を見たら掘立小屋のようなみすぼらしい小屋が一軒あって、夢の中でもしんどいらしく、早くこの船が海岸へ上がったらあの小屋で休みたいがなあと思ってたら、そこへ大きな波が寄せてきて、その波にうまいこと乗って、さーっとその海岸へ上がった。
ところがえらい勢いで上がったものだから舟から放り出されて、そして気が付いたら、小屋も舟もこっぱみじんになって、そこで夢が覚めた。
こういう夢を見たんだと主人が言うのですと。
この話しを聞いて、和尚さんはこれはやっぱり手術はいかんということやなと判断したそうです。
舟には櫓が無い。
櫓が無いけれどもちょっとづつ海岸に近付くということは、養生さえしていれば、日にち薬といいますか、ちょっとづつよくなっていくという意味であろうと。
沖から大波ですからこれは助かるから手術という意味ですが、でも結果が悪い。放り出されてこっぱみじんになった。
だからこれは手術はしないほうがいいと和尚さんはそう判断する。
卦もそう出てるし、夢のお告げがそうだから和尚さんだったら絶対に手術はしませんと。
それでその人は手術はしませんと言って帰ったんです。
後日来てからの話しでは、手術をしたんですね。
親戚が集まって手術をするんだったら早いほうがいいということで、手遅れになったらいかんということで、した。
主人の側の親戚に対して自分が、医者がしたほうがいいというのにしないと言って、死なれたときに立場が無いということなんですね。
はじめはしないつもりだったんですが、そんな気持ちになってきて手術をした。結果は手術後間もなく死んだんですね。
これも夢のお告げが当たってた、卦も当たってたしね。
卦には死相を観る人相があるそうで、病気の相、死相。
それには三年のうちに死ぬとか三カ月とかそういうことを書いてるそうです。
例えば、眉毛がありますね。
この眉毛の廻りが白くなるそうです。
この場合は本人の他に家族とか親戚も入ってくるそうです。
義理の関係もある。そういう関係に病人が、或いは死ぬと。
そういう相だそうです。
或る人が眉毛の廻りに白いのが出てる人があって、何方か病人さんがいるでしょうと聞きますと、その人は病人はいないですよと。
かなり病気は重いですよと、これは命にかかわるような病気ですよと言ったが、その人はそんな人はいないと。
ところが間もなくその身内の人はぽっくり死んだそうです。
そういって知り合いの人が教えてくれたそうです。
これが不思議なんですが、本人ならともかく身内の人ですよね。親戚の誰かの死相が私なら私、私に出てくるのですから。その辺が神秘ですね。
そういうことがあるのに、科学はまだそこまで来てないですね。
了
作品名:和尚さんの法話 「仏教と占い」 作家名:みわ