和尚さんの法話 「仏教と占い」
その一番近い宿世ですね。ところがそれで終わるんじゃない。
その前はまた霊界へ居って、その前はまたこの世へ居った。
その前は霊界へ居って、そのまえはこの世へ居ったと、そういうふうに宿世といっても遠いのと近いのとあるわけです。
そこを言ってるのです。
一つの前世を言ってるのか、或いはその前なのか。或いはその前なのかと。
その過去の幾世のときの罪なのかと、いうようなことを第二で知るということです。
善悪共に強いのか弱いのか。大きいのか小さいのか、ですね。
三の輪相は三世の中の受報の差別を示す。
つまりこの業は、どれだけの報いを受けるのか。
それはこの世で受けるのか。或いは次の世で受けるのか。
或いはそのまた次の世で受けるのか、となるわけです。
未来へ向かって、どういう報いを受けるのか。それを占うということです。
そしてその占いによって、おまえは前世でいうことをやって、今こうなってるんだと、今こんなことをやったら来世はこうなるんだぞと因縁を説くわけです。
だから因縁ということは、運命なんですよ。
その運命を占うのが占いですね。
その運命は、過去の善悪の自分の行いによって、自分の運命が現れてきてるんです。
決して先祖の因縁じゃないんです。自分の因縁なんです。
「是の如き等の人、憂慮(うりょ)を増長し、或いは悔いて心明了ならず。思想は憂乱して道業を修することを廃す。是の如き障難の事有らん者はまさに木輪相の法を用いて善悪宿世の業、現在の喜楽吉凶等の事を占察すべし。――― 其の輪相は三種有り、一の輪相は能く宿世に造れる善悪の業を示す。二の輪相は宿世の業の久近と強弱、大小の差別を示し、三の輪相は三世の中の受報の差別を示す。」
そしてここでただ単に占うだけじゃなくて、占うにあたってですね。
「若し此の輪相を以て占せんと欲する者は先ずまさに十方一切の諸仏を総礼すべし。」
占いをする人は、十方の諸仏を祈りなさいと。
そしてこういう願を建てなさいと。
「因って願を建てよ『願わくは一切の衆生をして速やかに皆受持読誦し、法の如く修行し及び他の為に説くことを得せしめん事を』と。
自分だけ得得するんじゃなくて、得得したことを他人にも教えるんですね。
「次に至心に一切の聖賢を敬礼すべし。」
聖賢というのは、菩薩とか阿羅漢とかですね。そういう方々を敬礼しなさいと。
「因って即ち願を建てよ。『願わくは一切の衆生をして速やかに親近し供養し菩提心を発して不退転を得せしめん事を』と。
親近というのは、仏法に親しく近付くということ。仏縁を深めて行くということですね。
そして菩提心を起こして不退転を得ますようにと、いうことを願いなさいと。
「後にまさに我が地蔵を礼すべし。因って即ち願を立てよ。『願わくは一切衆生をして速やかに悪業重罪を除滅し諸の障難を離れ、資生の衆具を充足する事を得せしめん事を』と。―――
― 占察善悪業報経 ―
資生の衆具というのは、現世利益です。
衣食住ですね。
衣食住を満足させてやって頂きたいと。
そういうことを祈りながら占いをしなさいと、こういうお経なんですね。
占う者は、自分の心を反省して、そして世間の富、或いは名誉を目的にして占う者は占ってはいかんと、占う者の心得を説いてあるわけです。
心が清らかにして、神仏に敬礼して占う。大勢の人の先生になったり名誉ですね、利益のために占うな。ただただ衆生済度のためにしなさいと。
心清くならない者は、占いは当たらないと。偽りになってくると。
二、 聞く事是の如し、一時仏舎衛国祇樹給孤独園に在しき。爾時世尊諸比丘に告げ給わく。「三因縁有りて識来たりて受胎す。母に欲意有り、父母共に一所に集在し共に止宿するも、然も外識未だ来り趣かずば胎を成せず。――― 若し亦父母共に集在するも父の相に子有りて母の相に子無くば則ち胎を成せず。若し亦父母共に集在するも母の相に子有りて父の相に子無くば則ち胎を成せず。若し亦父母共に相に子無くば則胎を成せず。
― 増一阿含経 ―
「三因縁有りて識来たり」この識というのは、霊魂のことです。三因縁というのは、一つは識なんです。一つは父。一つは母。この三つを三因縁といってるんですね。
因は識そのものです。縁が父と母ですね。そういう要因があって受胎が可能になるんだということですね。
「母に欲意有り、父母共に一所に集在し共に止宿するも、然も外識未だ来り趣かずば胎を成せず」
あの世から霊魂が来なかったら、受胎しない。
「若し亦父母共に集在するも父の相に子有りて母の相に子無くば則ち胎を成せず」
これは人相ですね。お釈迦さんはちゃんとここに人相のことを説いてあるんですね。
「若し亦父母共に集在するも母の相に子有りて父の相に子無くば則ち胎を成せず。若し亦父母共に相に子無くば則胎を成せず」
子供に恵まれないということになりますね。
他のお経の中にこういうお経もあるそうです。
或る夫婦が長い間、子供が出来なくて、もうほとんど諦めていたんですね。
そして或る人が、あなたいっぺんお釈迦様にお会いなさいませと。
お釈迦様にご相談をなさって、お釈迦さまがおまえは子は授からない、とこうおっしゃったら、あなたは子を諦めなさいと。
お釈迦様にそんな勿体ないことを言うていいんですかと。お釈迦様は救うて下さるのだからと。
そしてお釈迦様に相談をしたんですね。するとお釈迦様は、おまえは子は出来るぞとおっしゃった。
但し、この子は成人したら出家すると。そして私の弟子になると。これは予言ですね。
そしてその後に男の子ができて、そしてお釈迦さんの弟子になっていくというお経があるのです。
これは占うということよりも、お釈迦様とかお地蔵さんもそうですが、神通力を持ってますから。
所謂超能力ですね、今でいうなら。
超能力というようなものじゃないんですがね、仏教の神通力というのは。
お釈迦さんが一生、二生、三生・・・と、ずっと過去の生にどういう家に生まれて父はどんな人で母はどんな人で、どういう家庭であって、どういう物を食べてどんな喜びがあってどんな苦労があってと、皆知ってるんです。
そういうことを説いたお経もあるんです。
それは宿命通という通力なんですね。
ですから舎利弗、目連でも阿羅漢ですから当然そういう能力を持ってるわけです。
或る時、祇園精舎を建てるときに、長者の寄付で建ったんですね。
そして土を掘っていたら蟻がいっぱい出てきた。
それで長者よちょっと、ここへ来てこれを見てみなさい。
蟻がいっぱい居るだろうと。
この蟻は、過去の仏様が、何劫か前にこの世へ出てきた仏様以来、未だにこの蟻は生まれても生まれても何回生まれても、この蟻は未だにこの蟻は蟻なんだぞと。
あなたはこうして人間に生まれて結構なことなんだと思わないといかんのだという話しがありますが、そのように舎利弗もちゃんとそういうことが分かってるわけです。
だから占いと言ってしまえばなんなんですけど、過去のことを知って、皆さんにこうしなさいああしなさいということを指導したんですね。
作品名:和尚さんの法話 「仏教と占い」 作家名:みわ