八峰零時のハジマリ物語 【第二章 012】
《でも、その力を使うと魔界の悪魔全体に見つかってしまうし、そうなると、今の中途半端な力では魔界全体には勝てないんだろ? だったら、その力をフルに使えない以上、俺にはそれを確かめる術はないってことじゃん。それだとやっぱりちょっとね~……》
「お、おまえな~っ……シッダールタ様の力、見縊んなよなのだぞっ!」
すると、マリアは舞園の身体を入れ替わって俺に突っかかってきた。
《ちょ、マリアっ! や、やめ……》
すると、結果……マリアの身体が俺の身体の上に覆いかぶさってきた。
――しかし、今、俺の身体を使っているのはシッダールタだ。
身体がまた元に戻った舞園は、
「ご、ごめんなさいっ! 零時くん……あ、違った、シッダールタさん」
マリアは、あわててすぐに零時の身体から離れた。
「大丈夫だ。舞園ちゃんこそ大丈夫かい?」
「は、はい」
「……」
身体を入れ替わっているシッダールタは、あせっている舞園へ落ち着いた口調で声をかけた……表向きは。
(心の声)「いいぞっ! マリア……ナイスッ!」
《コラッ、そこの『エロ神』っ! 聞こえてるぞっ!》
俺は全力で突っ込んだ。
「コホン……とりあえずはこの話はこれで終わりということで。マリア……今は零時くんとそんなことで争っている場合ではない。時は一刻を争うのだぞ」
《おまえが言うなっ!》
俺はまた全力で突っ込んだ。
――マリアは、シッダールタの言葉にはあまり納得していない様子だった。零時はそんなマリアに、
《冗談だよ、冗談……マリア。悪かったよ、俺も少し調子乗り過ぎてた。謝るよ……ごめん》
と言って、零時はマリアに頭を下げた。
《も、元はと言えば、お前が疑ったりしてシッダールタ様にナメた口聞くからなのだぞ……》
《わ、悪かったよ。俺だって本当はシッダールタはすごい奴だと思っているよ。だからもう怒るなよ、な?》
《……ホ、ホントか?》
《ホント、ホント。》
そして、そこに舞園が入ってきて、
「ねぇ……マリア。もう零時くんのこと許してやって? 零時くんも謝ってるわけだし……だから、ねっ?」
絶妙なフォローである。
《ふ、ふんっ……ま、まあ、利恵がそう言うなら……しょうがないのだぞ、許してやるのだぞ》
《ありがとう、マリア》
《助かったよ、舞園》
《ううん、そんな……わたしはただ二人に仲良くなって欲しいだけだから》
《舞園……ありがとう》
《……》
舞園利恵は頬を赤く染めて顔を俯いた。
かくして、この件は舞園がマリアをなだめる形で終止符が打たれた。
「さて……零時くんとマリアも仲直りしたことだし、これから改めて今後について説明する」
そうして、シッダールタから『これからの話』が始まった。
作品名:八峰零時のハジマリ物語 【第二章 012】 作家名:mitsuzo