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ぽむぽむながし
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novelistID. 46412
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流星

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1.空
秋の風が吹く頃、友梨の足取りは重かった。友梨の鞄の中には37点の世界史の答案が入っていた。苦手な教科の上に、ヤマを張ったのだが見事に外れてしまったのだ。母はなんというのだろう。そんなことを考えると自然と足取りは重くなるのであった。もう日が落ち始めており、空が暗くなり始めていた。足を少し止め、路地に誰もいないのを確認すると空に手をかざして、ため息をついた。
「星なんて見えない・・・か。」
友梨は都会の空はどことなく薄い気がした。空に満天の星、そんなものは見たことなかった。目線を少し右に移したとき、ピカッと光るものを空に見た。
「流れ星・・・?」
少し期待したのだが、それが人工衛星だと気づいたのは直後だった。また、ため息をつく。それと同時に、流れ星を見たら何を願おうかと小さい頃のように考えた。
お小遣いをふやす、テストで100点を取る・・・テスト・・・。
「そうだ・・・。なら、未来が見えるようになりたい。が、いいな。そうすれば、きっとすべてが思いのままだよね・・・・。」
その時、秋の冷たい風が吹いた。その瞬間、はっと現実にかえった。
「そんなこと考えても仕方がないか・・・。」
かざした手を下ろし、うつむきながら帰った。

2.星に願いを
「ただいま。」
ドアを開けると、母が玄関で待ち構えていた。
「おかえり、で、世界史のテストは?今日答案返ってきたんでしょ?」
「今日は、先生が休みだったから。次の授業で返すって。」
「ごまかさないの!早く見せなさい!!」
母はこれまでにないぐらい友梨を叱った。点数のこと、嘘をついたこと。もし、正直に見せていたらどうなっていただろう。沈んだ気持ちで階段を上って二階の部屋に向かう。ドアを閉めて、電気をつけた。少し蒸し暑いので、窓を開けた。秋の風が部屋に吹き込んできた。友梨は窓の外を眺めていた。一番星がきらりと光っていた。すると、その星のすぐそばに赤く光る星が見えた。そしてその星は空を光りながら流れた。友梨ははっとしながら願った。暗い気持ちを消すために願ってしまった。
「・・・未来が見えるようになりますように・・・。」
冗談半分の軽い気持ちだった。星が遙か遠い空に消えると、冷静な気持ちになった。
「何馬鹿なことを・・・。」
と、その時!遠くから耳鳴りとともに、低く不思議な声が頭の中にささやいてきた。
(我が主よ。私に願いをかけましたね。)
「えっ、あなたは誰!?」
(私はあなた様の願いを叶える者。あなたに未来を見る力を与えましょう。)
耳鳴りがやみ、はっとした。今まで夢でも見ていたのではないかと思った。窓の外を見ると、あの赤い星は見えなかった。私は不思議な気持ちで心を満たされながらも、その日は早々と眠りについた。

3.見えた
その夜夢を見た。数学の抜き打ちテストをする夢だった。
「教科書の内容を理解していれば難しくないぞ。」
と、先生が言っていた気がする。そこからは覚えていない。
はっと目を覚ますと朝4時だった。目が覚めるなり、時間割表を見た。
「数学・・・。二時間目・・・・。」
昨日の出来事とさっきの夢が妙に気になった。ばかばかしいと思いながらも、数学に教科書を読み始めた。
すると、二時間目。
「数学の抜き打ちテストをする。教科書の内容を理解していれば難しくないぞ。」
クラスはどよめいた。友梨は驚きを隠せなかった。まわってきたテストは、今朝やった教科書の問題通りだった。友梨は問題を解きながら、昨日の夜の出来事を考えていた。本当に夢みたいなことが起こったのだと。チャイムが鳴ると、テストを前に回した。後ろの席の親友の里桜が、「難しかったねー。」といってきたので、とりあえず、「うん」といって、その場をしのいだ。不思議な気持ちが再び心を満たした。友梨は一人になろうと、トイレに入った。
「夢じゃ・・・なかった。」
すると、またあの耳鳴りが聞こえてきた。
(夢ではありませんよ。我が主よ。)
「あなたは・・・!本当に誰なの!?」
(昨日も言ったでしょう。私はあなた様の願いを叶える者。流れ星でございます。)
真っ白になった頭を三時間目のチャイムが元に戻す。声が聞こえなくなっても、遠くで耳鳴りはしていた。
それから、友梨は夢で未来を見るようになった。テスト、天気、友達のこと・・・。それはすべて翌日に起こることだった。
そして、友梨は見てしまったのだ。親友の里桜が、車にはねられて死んでしまう未来を・・・。

4.変わらない未来
「う、うそっ・・・。そんな・・・!」
バッと飛び起きると、時刻は午前2時をまわったばかりだった。友梨が見たのは、大通りでトラックにはねられる里桜。頭を抱えて、ベットの上に蹲った。
「嘘だ。嘘だ、嘘だっ!!!」
頭の中であの耳鳴りが響いた。いつもの不思議な遠くでする耳鳴り。その音を聞くと不思議な気持ちで心が満たされる気がした。
(嘘ではありません。未来は決まっているのですから。)
「だめ・・・!変えてみせる。こんな未来、いやだ!」
(あなたが見たいと望んだのではないですか。それに未来は絶対に変わりません。全ては運命、定めなのですから。)
耳鳴りはそう言い終わるとやんだ。友梨は蹲ったまま、再び眠ることなく夜を明かした。
「友梨!おはよう!」
「里桜っ・・・!!お、おはよう。」
朝、いつものように笑顔で挨拶をしてきた。友梨にはその笑顔が一瞬幻に見えた。
「あ・・・今日一緒に帰らない?」
「あー今日私部活でないで帰るから・・・。歯医者さんに行くんだ」
友梨は慌てて思い出した。里桜は事故の時、制服を着ていた。つまり、学校の行きか帰りなのだ。そして今は、朝は普通に学校で会えた。事故に遭うのは帰りと決まったようなものだった。
「あ、あたしもっ!部活でないで帰るから!!一緒に帰ろう!」
「・・・?じゃあ、一緒に帰ろう。」
その一日、友梨は気が気ではなかった。あの夢を必死で何度も思い出した。そのたびに耳鳴りとともに(未来は変わらない)という声がした。
そして、とうとう放課後。里桜と帰る友梨は未来に少しおびえていた。その様子を里桜は見て疑問を抱いていた。
「友梨?どしたの・・・?今日はなんだか変だよ?」
「そうかな・・・?・・・・あっ!」
大通りにさしかかって友梨ははっとした。ここだ。友梨は夢にあった、あの事故の起こる場所に着いたのだった。赤い信号に二人は立ち止まった。
「里桜・・・ここは・・駄目だよ・・・!別の道を通ろう?」
「え?どうしたの、ほんとに?それにあたしの歯医者さんそこ渡ったらすぐだし・・・。」
「駄目!私には・・・・・未来が見えるの!夢で見たの!!」
里桜には友梨の必死さが伝わった。しかし、里桜は友梨を信じることができなかった。
「変な夢を見たんだね。心配性なんだから。でも大丈夫だよ。」
信号は青に変わった。里桜は安代踏み出した。その時友梨の目には猛スピードのトラックが飛び込んできた。友梨は知っていた。そのトラックが止まらないことを。
「だめ・・・!」
作品名:流星 作家名:ぽむぽむながし