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永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
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moonlight 改稿版(前編)

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第一章



 七月。夏休み前。
 暴力的な暑さで、セミの声すら嫌に思う炎天下のなか、岩国総合高校(いわくにそうごうこうこう)職員校舎一階にある、放送室で、
『今日も聴いてくれてありがとう! 来週もよろしくぅー!』
 ネオがマイクに向かって叫んだ。
 そして、ゆっくりと音量を下げて、ホッ、と息をつく。
「……よし、今日もバッチリだったね、みっちぃ」
「ああ、おつかれ」
 アコースティックギターを壁に置き、みちるはネオとハイタッチを交わす。今日もひと仕事を終えて、みちるは胸の高鳴りが緩くなった気がした。それはネオも同じだった。
 周りにギャラリーがいるならテンションを楽しくできるのだが、ここにあるのは数々の機材だけ。幅も狭く、自分たち以外は誰もいないので、何回やっても、二人は緊張感を拭うことができないのだ。マイクの先にいる見えないギャラリー――学生たちはどう感じているのか、どんなふうに聴いてくれているのだろう、テレビでアーティストが収録する時もこういう気持ちなのかなあ、とネオは思った。