moonlight 改稿版(前編)
「うん。あんまり人には言わないけど、週三回はカラオケショップで歌っているし、ボイストレ―ニングの本も買って、わたしなりに努力してるよ」
そんなネオの一面を見て、
「すごいなぁ。こんなに努力しているなんて……私なんか全然だよ」
「いやいや、実緒と比べたら全然……」
「違うよ。真っ直ぐで、必死に夢に向かって……ネオちゃんが羨ましい」
実緒は肩を落とし、
「私なんか、いつも不安に押しつぶされっぱなしだもん。部員のメンバーにもバカにされるから……だから、そんなネオちゃんが、羨ましいよ……」
泣きそうな低い声音(こわね)で、床をじっと見つめる。その姿が自分の才能に悲観しているように、ネオには見えた。
だから、
「あ、あのねえ、実緒……」
悄然(しょうぜん)としている彼女の肩を叩く。
「そんな些細(ささい)なこと、ほっときゃあいいのよ! わたしもそうしているよ」
実緒は、ネオのまっすぐな表情を見つめる。
作品名:moonlight 改稿版(前編) 作家名:永山あゆむ