moonlight 改稿版(前編)
「はーい」
「すんません」
「まったく」
ふあぁー、と「あたしの身にもなれ!」と言わんばかりの大きなため息が漏れる。
「それにしても」
みちるはネオを方へ顔を向け、
「ネオ、その似顔絵は誰が描いたの?」
ようやく『本題』とも言える質問をネオに訊ねる。
「誰って、みっちぃも知っているじゃない。実緒(みお)よ、竹下実緒(たけした みお)!」
「ああ、あんたがたまに昼休みに話をしている、影の薄そうな女子のこと?」
「影が薄いって……失礼ね」
友達をバカにされて、ネオはむっとした表情で前のめりになる。
「ごめん。あの子とあんなにフレンドリーになるとは思わなかったからさ」
あんな事があって、仲良くなっていることに疑っていたみちるは、改めて彼女の人付き合いの良さに感心する。
本当に人付き合いが良いのだ。普通、入学して間もない頃は同じ中学校の顔見知りがいるならともかく、どことなくぎこちなくて、「あの人は相性がよさそうだな」と探りながらクラスメイトに話しかけていくだろう。しかし、ネオは物怖(ものお)じすることなく、クラスメイトと積極的に話の輪に入り、交流を深めていった。それは当時、一緒のクラスだったみちるも例外ではなかった。
作品名:moonlight 改稿版(前編) 作家名:永山あゆむ