小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
永山あゆむ
永山あゆむ
novelistID. 33809
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

moonlight 改稿版(前編)

INDEX|1ページ/89ページ|

次のページ
 

プロローグ



 四月末日。
「いそげ、いそげ、いっっっそげぇ――――っ!」
 ゆっくりと夕日が沈んでいく空の下、 岩国総合高校(いわくにそうごうこうこう)二年の麻倉音緒(あさくら ねお)が、学校の校舎前まで続く急こう配な坂――通称・総合坂を全速力で走っている。自慢のポニーテールが風に揺れる。
 今日は待ちに待った日。
 昨年、『軽音楽同好会(けいおんがくどうこうかい)』という部活を創ったネオにとっては、その日と同じぐらい夢にまで見た特別な日だ。
 自分と親友、そして新たに入部した二人の一年生部員で結成されるのだ。
 そんな、重要かつ、スペシャルなイベントがあるっていうのに、
「もう、なんで、なんでねてたのよ――っ!!」
 部活で使うプレハブ小屋は、先に演劇部が使うということになっている。なので、実際の活動は6時あたりから始まる。
 本来なら学校にいて、いつものように親友と図書室で本を読んだり、今日の活動について話したかった。しかし、『あるもの』を忘れて家に戻らないといけない事情があった。なので家に帰り、その重大なものを手にした……までは良かったのだが、「まだ時間がある」と余裕をこいでいたため、カーペットの上でボーっとしていたら、時の流れは急加速した。
<改ページ>
 マジで自分を責めたくてしょうがなかった。部長としてなんたる失態を犯してしまったんだ。
 腕時計は六時三〇分を知らせている。おそらく時間にうるさい親友が、今にも鬼と化そうとしているかもしれない。
 頭の片隅で親友の頭を冷やす方法を考えつつ、ネオは校門を突破し、さらに急になる――校舎前までの坂を、飛んでいるみたいに軽快に駆け上がる。こう見えて彼女は中学時代、陸上部に所属しており、日が暮れるまで毎日走っていたのだ。なので、この二段階坂もネオにとってはお手のもの。あっという間に校舎前。
「あと少し!」
 最後の力を振り絞り、昇降口を横切り、裏にあるプレハブ小屋の戸を開ける。
 ガラガラガラ!
 中には、二人の一年部員が待っていた。
「お、おっまたせぇー……う、うわあああっ!?」
 全力で走ったせいで足がもたつき、ネオはビターン! と這いつくばるように倒れ込む。殺人現場で見る死体そのものだ。
「せ、先輩!」