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おもかぴえろ
おもかぴえろ
novelistID. 46843
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魔法使い、旅に出る

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 癒やしの魔法使い犬の住むグーンマーに向け出発したかぴーは人目のない場所で早速ワープをしようとしていた。

『ねぇ、それってズルじゃないの?』

 サクッヤー姫神、いざ行かん! としているところに水を差す。

「は?」
『だってみんな歩いてるじゃない』

 ふよふよ~とサクッヤー姫神。

「魔法使いが魔法を使って何が悪い?」
『うに?』
「うに? じゃねー。可愛く言っても却下」

 うに? って何語だ。
 イラッとしながらかぴーは再びワープを試み掛け――。

『そこって遠い?』

 またしても出端を挫かれた。

「……あーもー!」

 かぴーはうなだれながら地図を取り出し、説明を始めた。



 その頃、グーンマーでは――。

「一休ー! さよー! かぴちゃんと旅に出るよ! 支度支度!」

 癒やしの魔法使い犬が子供たちと旅支度を始めようとしていた。

「そぉいや、その内っていつだ??」

 ま、いっか☆
 旅ー旅ー♪ サクちゃん神様と旅ー♪
 実にご機嫌である。

「こらー! 置いていくぞー!」
「やぁだぁ!」
「はぁい!」

 きゃいきゃいと賑やかな子供たちとカバンの用意をしたのだった。





「今ココ! 行くのはココ! わかる!?」

 地図を広げてかぴーは場所を指した。

『おお~! 遠いね!』

 地図を挟んだ向こう側に座るサクッヤー姫神の「今知りました~」な反応に力が抜けるのを禁じ得ないかぴー。

「歩いたら何日掛かると思うよ?」
『たくさん!』
「そう、たくさん掛かるわけ。だからワープすんの。わかった?」
『おお~』

 もはや目の前の相手がかぴーには浮き世離れの箱入り娘にしか見えなくて仕方ない。
 が、ある意味それは間違いではない。
 人とは次元が違う所でもお姫様なのだから。

『でもズルよね?』
「……歩けと? HP50のあたしに歩けと?」

 わなわなとかぴーは叫んだ。

「体力バカのあんたのお気に入りとはワケが違うのよっ!」

 体力バカ=帰省中の勇者の事である。

『違うの?』
「辿り着く前にあたしがくたばるわ!」
『ふぅーん? じゃ、かぴは何する人?』
「……聞いてたか? 人の話」

 もーヤダ、帰りたい。
 シリトン助けてー。

『シリトンはかぴに歩いて連れて行ってもらいなさいって』
「あーそー。……へ?」
『だから歩かないとダメなんだよ』

 前言撤回。
 覚えてろよ、シリトン。

「却下」
『え~?』

 なんだか心底残念そうなサクッヤー姫神。

「あ。言っとくけど、次邪魔したら帰るからね?」

 自称煙巻きの魔法使いかぴーは声高らかに宣言した。



 ワープするしないで揉めてまだシゾーカに居るとは恐らく思っていないだろう、シスター・シリトンは修行を抜け出してきた竜女・カナリアと長閑な一時を楽しんでいた。

「今頃、どこかしら~」
「まだその辺に居たら笑うッスね」

 なかなか鋭いカナリア。

「あらあら、いいの? そんな事を言って」
「言いますよ。だってあの人、体力ねーし、方向音痴だし」

 クスクス笑ってシスター・シリトンは、そうねと頷いた。

「まぁその分魔力で補ってるから良しとしましょう」
「良くないっしょ。攻撃は最大の防御なりがモットーな人ですよ。戦闘以外で役に立たないことこの上ねぇッス」

 バッサリ斬り捨てる。

「かなりんは容赦ないわね~。悪いけど、私は聞かなかった事にするわ」
「いッスよ。歩く火炎放射器を野放しにしたの、オレも知らなかった事にしますから」

 ニコニコと笑うシスターに竜女は爽やかに笑って見せた。
 かぴーが居たら失礼な! と噛みつくであろう、言われ様だった。




 またまたその頃、グーンマーでは。

「おかーさん」
「なーにー?」
「「かぴちゃん、こないね」」

 両脇に子供たちを引っ付けてながら犬はせっせとオイルを調合していた。

「その内来るって言ってたよ」

 瞬きもしないでスポイトの先を見詰める母にはお構いなしな二人。

「その内って?」
「いつ?」

 それはあたしが訊きたいよ。
 思わず言いかけて言葉を飲み込んだ。

「明日?カモ?」

 飲み込んで出た言葉に自分で笑った。

「「カモ?」」

 声の良く揃う二人である。
 これが双子の神秘なのか。

「さよっち、カモ知ってる?」
「トリさんよ、一休」
「ガーガーって鳴くのかな?」
「ガーガーはアヒルじゃないの?」

 微笑ましい光景だが、今はそれどころではない。
 ハテナをいっぱい飛ばしている子供たちをよそに犬は指を折った。

「痛み止めでしょ、止血用、腹下し用に、えーと他何が要るんだ?」

 来る頃合いを断言しなかったかぴーに直ぐには来ないと踏んで念の為小瓶に特製オイルを入れてみたが思いの外、旅先で必要だろうと思われる物が思い付かない。

「こんなもん?」

 首を傾げる。
 その時、庭でドスンと何かが落ちる音がした。



「~~~~~~~~!!!」

 痛すぎて声も出ないってこういう事ね。
 妙に冷静にかぴーは思った。
 で、ここはどこなの、と辺りを見るとどうやら民家の庭のよう。
 人の気配にヨッコイセと体を起こした。

「なんだなんだ? ……あれ!」

 中から声がする。
 声からして家人は女性のようだとかぴーはそちらに顔を向けた。

「あ!」

 そこにいたのはエプロン姿の犬だった。
 やっとの思いで犬と合流したかぴーだった。


クエスト完了
かぴー は 犬 と合流した。
経験値を 20 獲得した。