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女は今が幸せなら、昔の古傷は痛まない~鬼平犯科帳などなど。

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 顔色を変える平蔵。当然ですよね。私もケガが元で亡くなったのかと思いました。

 しかし、おまさは落ち着いた様子で

 いいえ、流行病で。あっけないことでございました。

 そうか、と、何ともいえない顔で頷く平蔵。

 そこで、お久が老人に手を引かれて出てきました。

 眩しく初々しい白無垢姿に、平蔵もおまさもしばらく見入ります。

 おまさ、お前もつくづく男運のねえ女だなあ

 つぶやく平蔵におまさが控えめに言います。

 長谷川様、もう一度、まさを手下としてお仕えさせて頂けないでしょうか。

 お前は俺を捨てていった癖によ

 この一言に絶句するおまさ。

 と、平蔵は笑い冗談だよ。お前がまた戻ってくれたら、俺は心強い

 お久の幸せそうな花嫁姿、それを嬉しげに見つめる育ての親の老人の姿が

 映し出されます。

 その後、平蔵とおまさは茶店の近くの河のほとりに佇み、

 それぞれの想いにふけりました。

 
 河は時のように流れて止まず、ぼうぼうたる人の世の

 想いが平蔵の胸に流れた

 最後のナレーションが心に残ります。

 ここでエンディングになります。

 もう本当にあらすじを追っただけ、しかもわかりにくいところもあったと思いますが、

 人の世の縁えにしの不思議さ、皮肉さ、儚さが切々と描かれていて、

 私はもちろんでした。

 何なんでしょう。本当に大事件というか、どんでん返しもなく、ただただ

 淡々と流れるストーリーの中に

 懸命に生きようとする人の姿、想い合っても、けして結ばれぬさだめの

 悲遇の恋人たちの姿が実に印象深く描かれています。

 鬼平さんを見ていると、スリルとハラハラドキドキする筋立ての話が

 面白いのだという当たり前の理論も通用しない気がします。

 淡々としているのに、何故、こんなにも心に響くものがあるのか?

 もしかしたら、それは人の世の哀しさ、うつくしさをリアルに描き出しているから

 かもしれません。

 心に残る良いお話でした。

 それとは別に、個人的には、おまささんにはいつか誰かお似合いの男性と

 幸せになって欲しいなと思わずにはいられません。