現想怪路 第一話「伝心交錯」
一
自分の夢見る世界と現実はいつも違っている。
夢を現実に出来るように努力することは素晴らしいことだが、努力で叶う夢であれば少し先の未来と変わらないだろう。
例えば、僕―神衣真―は昔、子供の頃にお化けや宇宙人、テレビで出てくる戦隊ヒーローなんかが実際にいたら良いのにと思っていた。
しかし現実の宇宙人やお化けなんてものは信じるか信じないかの世界の話で、戦隊ヒーローに至っては完全なフィクションである。
それをいつの間にか全て悟ったとき、僕は自分の幻想への夢を捨てていた。
でも僕が経験した「事件」は、みな現実だった。
まるで夢のようで今でも信じられないくらい、というのは嘘つきのような言い回しではあるが、本当に現実離れした出来事だった。
それによって得たものや失ったものは様々で、僕らの未来も変わってしまったけれど、なんとかそれを乗り切って、ここに生きている。
これから語る物語は、ほとんどの人が毎日見ている現実から離れ、現実味を帯びた「現想」―僕らにとっては現実そのものであるけれど―を見せてくれるだろう。
これが現実か幻想かは、あなたに決めて欲しい。
作品名:現想怪路 第一話「伝心交錯」 作家名:或宮とりえ