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「もうこれで、返品交換はできなくなりましたよ」
 凜子にも同様に笑いかける。
 シエルが人間になったってことは、この先、同じ時間を分かち合っていけるということ。
 同じ感覚で物を見て、感じて過ごしていける。
 こんな素敵なプレゼントは他にない。
 嬉しくて涙が出るってことを、凜子は生まれて初めて知った。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
 凜子が深々と頭を下げると、男もそれにならって頭を下げた。
「姫、僕にできることがあればなんでも言って下さいね。僕は貴女とずっと一緒にいますから」
 人間になっても、シエルの笑顔は何も変わらない。
 花がそこに咲いている。
「じゃあ、凜子って呼んで。それから、シエルの口から、ちゃんと気持ちを聞かせて」
 凜子はいっぱい伝えたいことがあった。でも、この二つの事だけでシエルの顔が真っ赤になって困り果てたものになったので、それ以上言うのはやめた。
 焦らなくてもいい、シエルとは一緒にいるんだから。

 ふと気づくと、凜子の指からシエルの指輪が消えていた。



 了