和尚さんの法話 「因果応報」
和尚さんの寺の在所に、根来さんというお婆さんが居って、そのお婆さんがいつも手が痛い、手が痛いと言ってるんですね。
それでその手を和尚さんが、ふっと、見ると手に数珠をかけたように白い蛇がくるくると巻き付いてるのが見えるんです。
あ、これは巳さんやなあと思って、巳さんをお粗末にしてるのと違うかなあと思ったのす。
根来さん、あなたのお家に巳さんをお祀りしてますのか。と、聞きますと
いや、家にはないけど、弟の山に祀ってます。
然し、あれはお稲荷さんと思うんですけれどもね。
和尚さんは、お稲荷さんと巳さんとこんがらがってるのと違うかなと思ったそうです。
そうですか、そこへ皆さんお参りなさっていますかと聞くと。
いや、一向に誰も参っていません、草ぼうぼうです。
それはいけませんぞ。
神様仏様というのはね、守って下さいと言うたら守ってくれるんです。
あなたは山を守ってもらおうと思って祀ってるんでしょ。
それなら敬意を表して、ありがとうございますと言うて、お参りしないと、神様仏様は罰を当てるんじゃないんだけども、お参りしなかったら徳が減るんですよ。
位の高い神さんに山を守らせておいて、祀った本人は知らん顔してたら徳が減る。
徳が減ると運が悪くなるんですよ。
徳が減るから参りに来いよ、という知らせなんですよ。
だからお参りせなあきません。
毎月、そのお婆さんに会うので翌月にお婆さんに会うて聞いてみましたら、まだ手の痛いのは治ってない。
参ったんですか。
はい、参りました。
何遍お参りしましたか。
一遍です。
一遍といわんと、何遍でもお参りしなさいよ。
そしてまた、翌月。
治りました。
お医者さんへ行ったらリュウマチだと言われてたんです。
リュウマチでも何でもないんですね、神さんのお咎(とが)めだったわけです。
それでお参りしたら、治ったんです。
その山へ祀ったという弟さんが、初めて和尚さんの寺へ来ましてね、姉がお世話になりましてと。
それで、お姉さんはあれはお稲荷さんだとおっしゃっていましたけど、お稲荷さんですかと、和尚さんが聞きますと、
いえ、あれは巳さんです。
巳さんですけど、姉がそう思うのも無理はありません。
きつねを置いてあるんです。
それで、巳さんに何で狐を置いてあるんですか。
狐はお稲荷さんですやろ。
巳さんを祀るときに、祀ってくれた先生が、祀ってから前のほうを見るとちょっと淋しいなあ、狐を一対買うてきて前を置いたら格好がつくから狐を買うてきなさいと。
先生、狐はお稲荷さんでしょ、これは巳さんを祀ってるんだから罰が当たりませんか、と言うたんですけど、神さんは悟ってるから罰なんか当てるもんか、置いたらええ、と先生が言うたので狐を買うてきて前へ置いたんです。と
だから知らん人が見たら狐を置いてるからお稲荷さんやと思うのは当たり前です。
ですが、あれは巳さんなんです。
それとよく似た話があるんですが、檀家さんに松田さんという人があって、そのお婆さんが体中に痒い物がいっぱい出来てきたんです。
そしてお医者さんへ行っても治らない。
それで和尚さんの寺へ来て、ご祈祷して欲しいというのでご祈祷をした。
するとお稲荷さんが出てきたんです。
その家の山にお稲荷さんを祀ってるというのは、和尚さんは知ってましたので、
あ、これはお稲荷さんを粗末にしてるんと違うかなあ、と思ったんですね。
そしてご祈祷が終って、聞いてみたらやっぱりそうだった。
根来さんに言うたのと同じことを言うてあげて、そんなことをしたら徳が減りますからお参りなさいませ、守ってくれてるんですから。
そしてすぐにお参りをしたそうです。
するとすぐに、体中に出来ていた痒いものが治ってしまったんです。
だから、お医者さんでも分からん病気があるんです。
それは病気と違うんですね、そういう場合はね。
また或るときに、或るお客さんが来まして、身体が病めて病めてしょうがない。
お医者さんへ行くけど、どこも悪くないというんですね。
こんなに病めてるのに悪くないはずがないのにと。
そして話しを聞いていると、たくさんの霊が出てきて、お客さんの後ろで右往左往してるんです。
和尚さんはその霊を見て、これはご先祖だろうなあと思った。
先祖がこんなに落ち着かんと右往左往してるということは、これは信仰上のことで何か変わったことがあるのかな、と思った。
それで、お宅のご宗派はなんですかと、仏教だろうと思ったけど聞いてみたんです。
代々の宗派のほかに、別の信仰をしてますかと聞いてみると、霊友会に入ってるとのこと。
お宅、その霊友会に入ってから身体が悪くなったんですか?
それともその前から悪いんですか? と、聞いた。
そういえば、入ってからですなあと。いう返事。
これはご先祖が、元へ戻って欲しいという知らせで、右往左往してるんだろうと思うて、
これはね、霊友会へ入ったのが、ご先祖はお気に召さんのですよ、と和尚さんが言うたんです。
では、明日から霊友会のお経をやめて、代々の宗派のお念仏でご先祖を拝みなさいと。
そして、身体が病めてるのは、この霊友会へ入ってるのがご先祖が気に入らんので、やめてくれという知らせで病めてるのだったら、霊友会をやめますから、どうぞその証拠を見せてくださいと言うて、なんみょほうれんげっきょは、おいといて、お念仏で先祖を拝んであげなさいと。
そしてそれで治ったら、やっぱりそうなんだから、すすめる先生がどう言うても貴方の家のご先祖はそれを受け入れないんだから止めなさいと。
すると、また来て、四~五日たったらすっきり治りましたと言うて来たんです。
ですから、宗教を変えるというのは考えものですね。
ですから代々の仏教が一番優れた宗教だと思うんです、仏教以上の宗教は無いです。
仏教のなかにも間違った教えを説く和尚さんが居ますけどね。
兎に角、霊魂は存在するし、あの世も存在する。
生まれても死んでも、霊魂は死なないんです。
人間に生まれたり、また霊界に生まれたり、そればっかり繰り返してる。
そして善いことをしたら善い境遇になり、悪いことをしたら悪い報いを受けるんだと、いうことを信じていただきたいですね。
了
作品名:和尚さんの法話 「因果応報」 作家名:みわ