どうってことないさ・・ (2)
「次は、約束通りサムを無罪放免にしてくれ。」 と
弁護士は、
「そのつもりだ。だから、父親だけを拘束して貰ったんだ。」
と自信有り気に・・
何しろ、公文書偽造だから、
おまけにこの町の弁護士も一枚噛んでいる。
その弁護士の資格剥奪も彼らの目的のひとつだ
と思っていた。
だが、
シンディーは、資格剥奪をちらつかせ、
船具屋の馬鹿息子が、事件をでっち上げた事を証言するのを条件に、資格云々は問わないと話を持ちかけた。
この町の弁護士は、その条件を受け入れた。
あっけないほどの幕切れだ・・
全ての筋書きが前もって出来ていたのか・・
マニラから来た二人の弁護士は帰ったが、
俺は・・どうもすっきりしない。
「あのな・・俺、振り上げた拳を下ろす処が無い・・」
「その石頭にでも力いっぱい振り下ろせば?」
「・・・」
「でも、私も何だか面白くないのよ。」
「・・ふふ、・・そう来なくちゃ・・」
「今晩だけだよ。そして、明日はマニラに私と帰るのよ。」
「ああ、チャイリンも帰ったし・・」
・・
その夜、
マージーたちが、馬鹿息子とその腰巾着、そして用心棒の三人を、
言葉巧みに、何時か俺が放り投げられたゴミ捨て場付近に呼び出した。
一度に三人が相手だったから・・
用心棒の持っていたアイスピックで、
俺は、顎を刺されたが、
その所為で、
狂った様に暴れたおかげで、
三人ともゴミの中に埋めてやった。
俺は、それを機に、二度と喧嘩はしないと誓った。
それを忘れない為に、
刺された場所には、バンドエイドを貼っただけで、
傷跡を残すことにした・・
作品名:どうってことないさ・・ (2) 作家名:荏田みつぎ