安らぎの地
彼女は震えながら泣いていた。膝がガクガク震え、水の形を維持できなくなり球型の水が崩れた。
私は見るに堪えん姿を見ていた。多分今までのつらさと悲しみと、いろんなものが混乱してるのだろう。私と今、話したことで。
だが
「あなたはもう苦しまないでいいんですよ。あなたの息子さんがもうすぐ来るのですから」
「わかってます。ですが約70年は合っていない息子になんて言われるか心配なのです。だから・・・すごく心配で・・・」
彼女の痛みは私にもある。だが、私は30代の男だ、つらくても耐えられる。しかし彼女は精神はまだ20歳くらい。この年でこんだけのつらいことをすれば私ですら耐えられないだろう。彼女はそれを70年近く、そんな思いをしてきた。泣くのも無理はない。
彼女は泣きながら話そうとする、それを私は止める。
途端にどことなく表れた黄色い光が私たちの周りをゆっくり回り始める。段々人の形になっていき、最後の光が集まるとパッと光り、人間をなった。それはさっきまで水の映像に写っていた彼女の息子と言われる人だ。
「お母さん?お母さんじゃよな?」
「鉄栁・・・鉄栁でしょ?私、お母さんよ」
彼女はおじいさんに走っていく。泣きながら、悲しみながら、久しみながら、喜びながら、謝りながら、すべての感情をおじいさんにぶつけていくように走っていく。彼女は彼を抱くと、ただ「ごめん」と謝るばかりだった。