音楽屋~おとらくや~
また、からんからん、とベルの音が鳴る。客だ。しかも2人。男と女。だが偶然会ったみたいで2人は別に恋人とかではないようだ。
「いらっしゃいませ、男性の方はこちらに。女性の方はこちらに」
私は2人を向かい合わせに座らせる。
私はこの2人に合う音を探す。見つけた。これだ。2人に合う音は。私はラジオにCDを入れる。スタートのボタンを押す。音が流れる。この音は振られ続けた人が立ち直る、そんな音だ。
2人は10分くらいこの音を聞かされる。私は立とうとする2人を座らせる。聞かないと心の傷が治らない。だから無理にでも聞かせる。
音が終わる。2人は最初は顔が曇っていたが、段々顔の緊張が解けていく。
最後には2人は手を繋いで店を出て行った。
私の幸せはそういうのだ、最初は不幸そうな顔をしている、だが私が集めた音によって心の傷が癒える。私はそのためだけに生きているといっても、過言ではない。
さて、次はどんな人が来るかね。
作品名:音楽屋~おとらくや~ 作家名:DG4