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和尚さんの法話 「恩を仇で返す」

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暇があったらお念仏を称えなさいとおっしゃってますね。

これはお経にもあるんですが、或る家へ訪問しますね。
訪問をされて、行ったがために行った先の人がご馳走をしてあげましょうといって、鳥
を殺して出したとか、魚を釣ってきて殺したとか、人が行ったがために、これは人じゃ
ありませんが鳥が殺された、牛が殺された、魚が殺されたというようなことがあります
が、

お客さんが来たというので生き造りでもしてご馳走しようというようなものですが、
行かなければ死なずにすんだ。

自分が行ったがために死んだとすると、これは罪になるんです。

自分が殺したんじゃないけれども、人間を殺したというほどの罪じゃないけど、殺生と
いう罪ですわね。


自分のために死んだ。

自分が直接殺したんじゃないけども、行ったがために相手先の人が殺した。

その罪は全部じゃないけれども、ほとんど自分が罪を受ける。

そういうことをお経に説いてあります。ですからある面では厳しいですよね。


『懺悔』

そういうことをいうと罪だらけじゃありませんかと、いうことになるのですが、懺悔と
いうことがありましてね。懺悔はどの宗教にもあるはずですね。


懺悔して罪を犯す、また懺悔しては罪を犯すというのは具合が悪いですが、懺悔したら
本当にもう悪いことをしないということを心に決めて、うっかりやってしまったらまた
懺悔しないとしょうがないですが。


兎に角、本気でもうしないつもりで懺悔するということになったら、その罪は消えてい
くんですよ。懺悔滅罪という言葉があります。



或るお家で、小さい子供が死んでね。
寺が無くて、和尚さんの所へ葬式を頼みにきたんだそうです。

それでお通夜に行って、お通夜では必ずお話をしますからね。

そしてお話が終わりかけたときに、一人のお婆さんが、この和尚さんの話をよう聞いて
おきなさいよと言ったんです。

そしたら、和尚さんの寺ではご祈祷を頻繁にしてるんですが、とくに安産のご祈祷が多
いんです。

そのお婆さんは、昔息子の嫁の安産のご祈祷をお願いに行きましたというわけです。

そのときに、和尚さんはお宅に水子があるんじゃないですかと、言ったそうです。

和尚さんはそのことを聞いても昔のことだったので忘れてしまって記憶になかった。

で、水子はございますということだったんです。

それは私じゃなくて、家の姑にございますと。

その姑さんは、他のご祈祷の所へ行っても水子のことを言われるそうなんです。

ところが、そんなことはございませんと、隠してしまうんです。


何故かといいますと、それは戦前の話になるんですね。

姑さんが若い頃の話ですね。

誰か好きな人があって、赤ちゃんが出来たんですが、今と違って中絶をするということ
が出来ない時代だったんですね。

堕胎罪という罪になったんです。

それが知れたら警察問題になるわけです。産んでも大変だったわけです。

今と違って、ててなし子といって、うるさい時代だったそうです。

それで中絶をしたんです。

知れたらえらいことですから、産婆さんと家族だけの秘密にしたわけです。


ですから未だに知りません、ありませんといって隠してしまうわけですね。

今だったら隠すこともないですが、昔の人ですから習慣付いてますからね。

だから今でも水子と言われるとございませんと隠すわけです。

そしてそのとき、和尚さんはお婆さんは足が悪いんじゃないですかと言ったそうです。

和尚さんは言ったことを忘れていましたけど、そう言ったそうです。

そのとき和尚さんは水子の供養もしないから足も痛くなりますよと言ったそうで、供養もして、懺悔しなさいと言ったそうです。

それで懺悔とはどうすればいいんですかと聞いたそうですが、

懺悔とは、皆に私はこういうことをしました。こんな恥ずかしいことを、
こんな悪いことをいたしましたと、皆にそれを撒いてしまう。

知ってもらうということですね。

それが本当の懺悔です。



だけど、私もそれはなかなか出来ることじゃないです。

だから、お仏壇の如来様に懺悔しなさいと。

誰も見てないんだからそれだったら出来ますから。

先祖じゃなくて、如来様に懺悔するんです。


私はこういうことを致しました。悪いことを致しました。

どうぞ許して下さいというて謝りなさいと。

そう姑さんに言うてあげなさいと。

そうしたらその足の痛いのも治ると違いますかと、和尚さんが言うたそうです。

和尚さんがそう言うたと、姑さんに言うと、そうかい、それなら足が治るというなら
と、いうので仏様に悪うございました、と言うて毎日毎日謝ってたそうです。


そしてお嫁さんがお産をして、その仏間に子供を寝かせていたんですが、それが3年も
4年も続いていたんですね。

お婆さんが毎日毎日、悪うございました。どうぞお許し下さいませと。

そうすると子供も3年も4年もそれを聞いていると分かりますよね。

お婆ちゃんは何か悪いことをしたんだろうかと。



兎に角、そのお婆さんは死ぬまで謝ったそうです。足も治ったそうです。

そしてけっこうな往生をさせて頂きましたと言うてました。

だから懺悔はそれだけ罪滅ぼしになってるという話です。



人と話をしていてその人を怒らせてしまった。

それでも謝ればいいけど謝らずに帰ってきたというときは、家でお地蔵さんに謝ったら
それでいいんですよ。


「我昔所造諸悪業 皆由無始貪瞋痴 従身語意之所生 一切我今皆懺悔」

これを称えながら罪を謝ったらいいんです。

皆さんは、般若心経を写経しますけど、この懺悔文を写経されると宜しいと思います
ね。

和尚さんが、いろんな仏様や霊が見えるのは、その人にとって必要な場合に仏様が見せ
てくれるんだと思いますとのことです。

和尚さんの寺へ賽銭を盗む人がいて、それが日に何回も盗みに来るそうです。

それで和尚さんがその人に、おいこらーっと、言うても知らん顔してるんですね。

それでまた大きい声で言うと、耳が遠いんですと言うんです。そうか、耳が遠いのか。

そりゃあこんなことをしてたら耳も遠くなるわいなと。


そしてその人の後ろを見ると、弘法大師が泣いてるんです。

これは弘法さんに縁のある人に違いないと思って、泣いてるということは、こんなこと
をしたらいかんじゃないかと、いうことでしょうね。


それでお前は真言宗かと聞くと、はい、真言宗ですと。

そして弘法さんの周りに大勢集まって、皆下を向いてしょぼんとしてるんです。

これは先祖やなと和尚さんが思った。


お前の先祖も泣いてるぞと。

お前の親も死んでるのと違うかというと。両親は死んでると。そうだろう。

弘法さんの周りで皆泣いてるぞ。

死んだら終いと違うんだぞと、そこで懇々と説教したそうです。