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和尚さんの法話 「恩を仇で返す」

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『猿を撃ち殺した』

恩を仇で返すという言葉がございますね。
恩を受けた人を敵対するというのか、恩を返さないという意味が主だろうと思いますけ
れども、兎に角、恩を仇で返すと。

これはもう仏の道は勿論のこと、人の道から申しましてもあってはならんことなんで、
仏教からいうと大きな業になると思いますね。

 
 和尚さんの子供の頃に、和尚さんのお父様は夕食のときに、いろんな話をしてくれた
そうです。

こんなことを聞いたとか、夕刊にはこういうことが出ていると。

それをまた和尚さんは聞くのが楽しみだったそうです。

お父様から話を聞くと、それからどうした、それからどうなったと。


そのときの話の一つに、これは事実の話なんですが、或る人が、なんとかしてお金を儲
けたいというのか、成功したいというのかそんなことでしょう。

お稲荷さんに願をかけて、願いを聞いて頂いたら大きな鳥居を寄付致しますと言うてお
願いをしたんだそうです。


それから何年かたって、成功したらしいのです。

ところが、約束したはずの鳥居を寄付しなかったんです。

そうすると、後年ぼつぼつと運が悪くなって落ちてきたんです。

こういう話を未だに覚えてるということなんですが、これはもう人を騙したんじゃなく
て神様を騙したんですからね。

神様は怒ったというんじゃないんですけれどもね、因縁因果の業でしょうし、このまま
いくと余計に大きな不徳になりますから、これはもう元へ戻してやったほうが業が軽く
すみますので、この人にとってはいいのではないかというので戻したんだと、私はそう
解釈しますね。


兎に角、そういう困ったときにお稲荷さんに願をかけて、成功したら鳥居を建てると約
束をしてた鳥居を建てないで、それでまた没落する。


そういういろんな話がありますが、恩を仇で返すということからちょっとずれますけれ
ども、これは夕刊に出てたのですが、或る農家の人が時々鉄砲を撃ちに行くんですね。

農業と両方やってたのか分かりませんけど、兎に角鳥や獣を撃つ人があって、
そして山に入ると、木の上に猿が居て、その猿のお腹が大きかったそうなんです。

その猿を狙って鉄砲を向けたんですが、その猿が両手を合わせてこっちを向いて拝んだ
そうです。

ところが、その猿を撃ち殺したんです。

そしてその後に、その人の奥さんが赤ちゃんを産むんですけれども、三人子供が生ま
れたんですが、その三人の子供の身体はお猿さんみたいに全身に毛がいっぱい生えてる
んです。


そして猿を殺した報いだろうと、いうことで新聞の記事になったわけです。

その頃はそういうことを遠慮せずに書いたんですね。

その時代というのは、珍しいものは見世物にでも出したくらいでしょ、今みたいに人権
とかなんとか言わない時代でしたから、変わった子供なんかは見世物に出された時代で
すね。

その子供はいかにも人間か猿か分からないような子供でしたけども、然しながら動物園
へ入れるにしても人間のお腹から生まれた子供だから動物園へ持っていくわけにもいか
んし、ということを書いてたそうです。

これはまあ、恩という話とは違いますけれども、こういう話があったということで、
和尚さんの寺の寺男が、お爺さんですが、その人に聞いた話ですが、或る人が困ったこ
とがあって、助けを求めて或る人から助けてもらったんです。


金銭的にね。それから後に、その助けた人が困ってきて、その助けてあげた人に助けを
求めていったんですね。


自分が以前に助けた人だから助けてくれるだろうと思ったんですね。

恩をかけるわけじゃないけれども、困ったらそうなりますよね。

前にしてあげてれんだから、自分にもしてくれるんじゃないだろうかと。

なんでもないところへ行くよりも行きやすいですよね。

ところが頼んだんですが、助けてくれなかったんです。


そしてその人が自殺をしたようなんですが、その助けなかった人が団体で善光寺参りを
したんです。

善光寺に地獄巡りという真っ暗なところを回る所があるそうですね。

そこを団体で通ったんですが、本人だけがそういうのが見えたというんですが、鬼の姿
が出てきて口からぱーっと火を吹き付けられたんだそうです。

それを珍しい体験をしたというので人に語ったんですね。

それから帰ってきて、どれくらいかたって、寝付いてしまってそのまま亡くなってしま
ったんです。


それは自分は助けてもらったのに、その人を助けなかった報いではないかと寺男の爺さ
んが話していたそうです。

だから恩というのは、やっぱり返さなければいけませんね。


『徳が尽きて寿命が無くなった』

和尚さんの檀家の人ですが、或る老夫婦がいて、そして子供もいないんです。

そのお爺さんが気に入ってる甥がいて、自分が死んだら全ての財産を譲るということを
言ってたわけです。

そしてそのお爺さんが死んだんです。

お婆さん一人になったわけですが、お婆さんもそのつもりでいたわけです。

そしてそのお婆さんも亡くなって、その甥もそのつもりでしたので葬式も全てその甥が
行ったわけです。

それで甥はそのつもりにしてたんですが、法律がありますからね、お婆さんが先に死ん
でお爺さんが残ったんだったら法律はそのとうりに甥のところへ財産はいくんですが、

ところがお爺さんが先に死んだわけです。

お婆さんが残ってるからそのお婆さんに所有権が移るわけですね。

ですからお婆さんが死んだらそのお婆さんの系列へ財産が行くわけです。

ですから甥のところへは財産はいかないわけです。


ですので、思わぬ人が財産を受けたわけです。

それまでは行き来もしなかったような人が全ての財産を受けたわけです。

お爺さんが死んで、お婆さんがまだ生きてるときにそういうことが分かったんですが、
気に入らない人だけど法律でそう決まってるなら仕方が無いけど、先祖の供養だけはし
て下さいと、お婆さんはお願いしてたわけです。


ところが、お婆さんが亡くなるとすぐに、その家屋敷を売りに出してしまったんです。


周りの人は、それはけしからんということになったわけですが、屋敷を買う人はお金を
半分だけ納めてたんですね。

ところは周りの人はけしからんというので、屋敷を売るには判が要りますがその判子を
押してくれない人がいたわけです。

それで中途半端になって、お金を半分納めてるからその買った人は屋敷に入ってきてる
わけですが、名義は変わらない。屋敷を売ってお金が欲しいのにそれもいかないと。

しかも先祖の供養を頼まれてるのに、仏壇は和尚さんの寺に持ち込んできたそうです。


そうこうしている間に、その財産を受けた人は交通事故で死んでしまったんです。


それでその人の嫁さんがびっくりしてしまって、亡くなった老夫婦の墓を建ててくれと
いって、和尚さんに言ってきたそうです。

が、墓は建てたけどれども、ほったらかしでお参りもしないそうです。


然し、そういう人だから因縁が深いですね、そこへ財産を受けてお金を得ようとしたか
ら徳が尽きて寿命が無くなったんじゃないかと思うんです。