赤い糸の奇跡
私の瞳が一点を見る。
信号が青に変わって人が一斉に動き出した。
私も歩いた。その一点に向かって。
交差点の中央に差し掛かる 。
「見つけ…た…よ」
あなたの前に立ち止まる。あなたが私をじっと見ている。
私はもう涙であなたが見えない。
「どうしてこんなことを考えたりしたのよ」
あなたは何も言わずただ、濡れる私の髪を優しく撫でた。
行きかう人々は 私たちを 迷惑そうに 避けて通る。
やがて 人の波は 引いていった。
「信じていたよ。君は必ず俺を見つけ出すって。この恋が運命なら、どこにいても
お互いに見失う事はない。想いが強ければこの沢山いる人の中でもふたりは引き寄せ合うって」
「私はあなたじゃなきゃダメだもの。きっとあなたがいなくなったら私は死んじゃうから」
「クスッ、大丈夫。死なせたりしないから」
そう言って近づいてくるあなたの唇。私はそれに答えるように瞳を閉じた。
雨は何時の間に白い雪に変わっていた。
交差点の中央に残されたふたり。あなたのKissは特別に甘い。
交差点の中央。
けたたましく鳴り響くクラクションの音。
ふたりを避けて車が行きかう。
だけど、ふたりの唇が離れることはなかった。