海竜王の宮 深雪 虐殺11
長が代表して、到着したふたりに挨拶の口上を申し上げる。この時ばかりは、竜王たちも主人たちも、東王父たちと同じ壇に立ち叩頭する。深雪は、父親に抱っこされたままだが、黙っていろ、と、命じられているので、じっと祖父母の様子を珍しそうに眺めているだけだ。
三日もせず、翌日には目を覚ました。きちんと食事とクスリを服用させれば、問題はないらしい。
「お久しぶりですな、伯卿殿。そして、皆様方。・・・後見を引き受けたのに、顔も見ずに過ごしておりましたこと、お詫び申し上げます。・・・今回は、妻と、深雪殿と交流させていただこうと参じました。どうぞ、よしなに。」
東王父が、そう口上を述べ、こちらも軽く叩頭する。竜族側は膝をついているが、こちらは、軽く曲げただけだ。それから、深雪の前にやってくる。背後に控えている幕僚たちや従者たちには、見えないように、ふたりして深雪に見えるように人差し指で、自身の口元を抑えた。喋ってはいけない、と、いうことだ。
「深雪殿、初めまして。・・・あなたの後見を任された東王父と申します。祖父とでも思ってくだされ。それから、こちらが、西王母。こちらは祖母と思って甘えてくださればよろしい。」
「ごきげんよう、深雪。西王母です。・・・・うふふふ・・・可愛いこと。抱っこさせていただけますか? 」
おいで、と、視線で示せば、小竜は両手を広げる。西王母の心で呟く声は聞こえているから、内心で、黙っていなさい、と、付け足して抱き上げる。小竜にとっては、ここんところ、じぃじとばぁばと暮らしていたから、いつものことだ。大人しく腕に収まっている。
「あら、珍しいこと。深雪は人見知りが激しくて、なかなか懐きませんのに。」
「本当に、珍しい。さすが、西王母様です。」
是稀と白那が驚いた演技で微笑む。幕僚たちに見せ付けておけば、文句も言えないだろう。
「深雪殿、私もよろしいかな? 」
今度は、東王父が手を差し出す。それにも、ひょいっと大人しく移動する。周囲が、おおっとどよめいた。神仙界のトップに近いものたちに抱っこされているのも珍しいことだ。ただの後見というなら、こんなことはないし、本来なら、こちらから挨拶に出向いてしかるべき相手だ。それが、わざわざ、来訪し小竜をあやしているのだから、気に入られたと見ていいだろう。何やら話しかけて、神仙界の重鎮である夫婦は微笑んでいる。小竜は、何も言わないが、大人しくしているから、それなりに懐いたらしい、と、感じてくれれば重畳だ。
「どうぞ、奥で休息してください、東王父様、西王母様。」
長が、ふたりを案内する。腕に小竜を抱いたまま、東王父が、それに続き、西王母も続く。その後を竜王、主人夫婦、次期も続いて接見の間から下がった。
長が、適当な
作品名:海竜王の宮 深雪 虐殺11 作家名:篠義