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海竜王の宮 深雪  虐殺9

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 亡くした桜の代わりを貰い受けたいのだが、あれは白虎の一族のみが子供の頃に授かるもので、桜は特別中の特別だったものだ。白虎の長老が、深雪の後見をする証として授けたものだったからだ。さすがに、「次の新しい猫をください。」 と、簡単に言えるものではないし、深雪に新しく名づけさせて、その名前を守りの猫に刻むのは白虎の長か長老にしかできない。今回の騒ぎを知られずに、貰い受けるとなると、かなり至難の業だ。
「バカモノ、貰ってきても意味が無い。杜紗も連れて来ないとならないんだぞ? 」
 守りの猫に生涯を賭けて守る相手の名前を、その心に刻み付けなければ、正式な守りの猫にはならない。それには、長が必要だ。
「・・・・簡単に言うな。相手は、白虎の長だ。」
「かまわん、あれなら知り合いだ。・・・昔、蓮貴妃が叩きのめしたことがある。」
「・・・事態が収束して、深雪が水晶宮に戻れるほどに回復してからだ。まずは、シユウの動向だ。」
 どうも、シユウの王が決まったらしい。それが即位して天宮に参内して正式に認められたら、それで、この騒ぎは落着くはずだ。それまでは、ある程度の人員は竜族の領域ギリギリに配置しておかなければならない。その情報収集を簾が蓮貴妃を使ってやっている。まずは、そちらを片付けろ、と、夫は嗜めた。
「承知してる。・・・・天宮への参内なら派手な行列をするだろう。それを確認したら連絡が来る。・・・どちらにせよ、深雪を戻すのは、まだまだ先になる。左目は再生させなければならないからな。」
 体調が悪いので、という言い訳はできるが、派手な怪我をしているのは理由がない。だから、左目が再生されない限りは、深雪を水晶宮に戻すわけには行かない。今年一杯かかるかもしれない、と、長夫婦も考えている。
「弟たちが戻ったら、随時、このことは教えておく。それでよいか? 簾。」
「それでいい。しばらくは、母上と華梨が交互に西海の宮へ降りてくれる。シユウのほうが片付いたら、それに私と蓮貴妃も付き合うから、黄龍が、どちらかは水晶宮に居るようにさせる。」
 ふたりともが留守にすると、何かと竜族のお歴々たちが五月蝿い。どちらかが水晶宮に滞在していれば、それも言われない。簾も、水晶宮の次期様は臆病者だと謗りを受けているのが腹立たしいのだが、そういうことにしておこうと夫と相談した。しばらくは、身体の弱い小竜だから、と、公式の場に出さずに隠すつもりだ。いつか、その評価は覆させるつもりだが、今は、このままだ。