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海竜王の宮 深雪  虐殺8

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「この小竜は、触れていれば、どんなに弱っていても相手の心が見えているのです。ですから、私が叱っていることも、私が心配していることも理解しております。大人しく薬湯は飲み干しましたでしょ? そういうことでございますよ、お二方。」
 蓮貴妃が、どんなに叱っていても、心配して慈しんでいることは知っているから、小竜は唸らないし、慣れた波動に包まれて安心しているのだ。うっかりしていた二人も納得した。普通ではない小竜だ。そういう能力があるのだと失念していた。
「だから、簾様は、『母の胸が必要だ。』と、おっしゃって側を離れられなかったのですか? 」
 意識のない小竜に、ずっと付き添っていた簾も、それを知っていたから側から離れなかったのだと、静晰も、ようやく思い至った。意識がないからいなくてもいい、と、言ったが、そういうものではなかったのだ。
「・・・はい、然様でございます、静晰様。ですが、あの時点で、我が上を謡池へ送ってくださったのは適切な判断でございました。あれ以上に朱雀の力を衰えさせていたら、すぐには復帰も叶いませんでした。我が上になりかわり、お礼を申し上げます。」
 深くお辞儀して蓮貴妃も謝意を表す。確かに、あの時点で搬送してもらわなければ、簾自身もただでは済まなかった。
「そうでしたね、この子のことは失念しておりました。・・・ですから、私たちでは泣かれてしまうのですか。」
「ええ、ですが、私くしも長期間、こちらに滞在することは叶いません。まだ、情報検索が完了しておりません。とりあえず、乳母様が戻られるまで、と、我が上から期限をつけられました。」
 蓮貴妃は、簾の懐刀だ。シユウの動向を探るには、蓮貴妃の知識が必要で、さすがに無期限には貸し出せないらしい。シユウの動向さえ掴めたら、竜族も動きやすくなるし、華梨を、こちらに下ろす算段もできる。まず、それが片付かないと、どうにもならないのが第一の問題点だ。
 ああ、なんて厄介な小竜だ、と、内心で静晰は呆れた。家族でなければ、意識がなくても牙を剥く。寝てるんなら、大人しく寝ててくれ、と、思いつつ、とりあえず看護は蓮貴妃に任せて下がることにした。