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しわくちゃのコマクサ

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 たかし君は六年生。身長はあまり高くないけれどボクシングをやっているらしく、筋肉質でとても力自慢だ。ボクシングをやってる人は普段は人を殴っちゃいけないって聞いたことがあるけれど、たかし君はそんなことはお構いなく暴力をふるう。クラス、いや近隣の町でも恐れられている子だ。
「ちらっと見たのと声でそうかなって思ったんだけどまだ確証はなくてさ。それで今度見にいこうと思うんだけどかずやも付いて来てくれないかな」
「僕が? でも僕がいたところでたかし君にかないっこないよ」
「いや、かずやに何かしてくれってわけじゃないんだ。ただついてきてくれるだけでいいんだ。お願いだよ」
「うーん」
 元々荒事が得意じゃない僕はたかし君が拳を上げただけで尻もちをついてしまうだろう。でもついて行くだけなら……。ともひこは基地に付いてきて欲しいと頼んだ時は『ダメかな』だったけれど今回のは『お願い』だった。
「そこまで頼まれたら断れないよ。役に立てるかわからないけど付いて行くよ」
「本当に! ありがとう。かずやがいてくれるだけで絶対心強いよ」
 ともひこは僕の手をとり大げさすぎる位にぶんぶんと振りまわす。ちょっと肩が痛い位だったけれどともひこがあまりに顔をほころばせているので僕もなんだか嬉しくなってぶんぶんと手を振りまわし返していた。
作品名:しわくちゃのコマクサ 作家名:月灯