カーテン
前のカーテンほど外の明るさは入ってこない。だけど、夕陽が明るくカーテンを染める。
キミは、珍しくボクの前で溜め息をついて立ち上がった。
「ひまわり、貰ってくにゃん」
キミは、一本ひまわりを抜いていくと紙にくるんで玄関へと出ていった。
明るいひまわりの花の後ろ姿など、みんなは見ないんだろうな。
ひまわりの花も 誰に見られたとしても たったひとつお日様にだけは、見せない姿なんだろうな。
ボクは、キミをすべて見ていてあげようと思う。
「大きなひまわりの咲く場所に行こうね」
「うん、約束にゃん」
溜め息をついていたその顔が 明るくなった気がしたのは夕陽の所為じゃないよね。
キミが帰ったリビングで、カーテンを ひとり眺めてみる。
自分の部屋なのに 何となく落ち着かない。もう少しキミといっしょに居たかった。
足元にたたまれておかれた奇怪な柄のカーテン。キミとの想い出は忘れないよ。
なんてことを思いながら、カーテンを半分開けて西の空の眩しい夕陽を眺めるボクが居る。
気分転換のつもりが 少々おセンチな気分にさせるキミと選んだカーテン。
ただそれだけなのに……。
― 了 ―