カーテン
「重い?」「いや、大丈夫だよ」
「楽しみ?」「そうだね」
「うふふ」「ん、なに?」
「良かった」「……」
「…手」「…はい」
「今度のは こうだね」「何が?」
「カーテン」「そう」
さて、またボクの思考がフル回転だ。
キミの暗号を解読しないと間の抜けた返事のままになってしまう。
キミがボクと繋いだ手を離し、また繋いできた。
ピーンと閃いた!と自分の中では可笑しくてたまらない。
「そうだね、前のは一枚だったけど、これは二枚で窓いっぱいだからね。真ん中でくっつくわけだ。ね、そうでしょう?」
何を得意気になっているんだと思うボクにキミは微笑んだ。
「うん、眩しい方だけ閉めれば、お外の風景もみられるね。いやぁ、便利だこと。にゃん。」
その答えに ずっとキミのほうが考えていたんだとボクは照れ笑いをするしかなかった。
道の向こうに ひまわりの花が咲いていた。
隣にいるキミのように(いや喩えが逆かな?)キラキラと陽射しに揺れていた。
「あの畑のひまわりだったのかなぁ。ずっとお日様に下に居たかったかも」
「ちゃんと 大事に飾ってあげるから それはそれでいいんだよ」
ボクを見上げる微笑んだキミの瞳にもひまわりが映っている。
(いや そんなはずはないんだけど… 残像だったかな)
「ただいまー」
「おかえりー」
部屋に帰って、カーテンを広げた。背の高いボクがカーテンレールに金具を掛けていく。
キミが、じっと見つめてる視線は、たぶんボクの背中じゃなくて カーテンなんだろうな。
「どう?」
振り返ったボクは、キミの顔に GOODの文字を見たような気がする。
「其処に立ってて」
キミは、携帯電話のカメラでカーテンを写した。
「どれどれ?」
ボクが、見ようとしても見せてくれない。
やや強引に取り上げて見てみると画像にはカーテンの前のボクが大きく写されていた。
「あ…… はい」
膨れっ面のキミに携帯電話を返した。キミがボクを見てくれていたのが嬉しかった。
「一緒に写らないと」
キミの手からもう一度携帯電話を取ると、キミの肩を引き寄せて数回シャッターを押した。
「ちゃんと 今日中にメール送信すること。期限厳守だからね」