宇宙の宅配便
「こんにちは、宅配便でーす」
「はーい!」
インターホン越しに聞こえた声に、僕はハンコをもって玄関に飛び出した。
荷物の送り主は、わかっている。お父さんだ。
僕のお父さんは、宇宙で働いている。なんだか難しい研究をしていて、もう何年も地球に帰ってきていない。
その代わりに、月に一度はこうして宇宙から宅配便を送って来てくれる。中身は、宇宙のいろいろなお土産だ。
先月は、きらきら光る隕石のかけら。先々月は、古くなった宇宙船の一部。更にその前には「宇宙の空気」だなんていって、ぱんぱんに膨らんだビニール袋が送られてきたっけ。
さあ、今月は何が送られてきたんだろう。玄関のドアを開けると、いつもの宅配便のお兄さんが、にっこり笑いかけてくれた。
「はい、今月の荷物だよ」
「ありがとう」
ハンコを捺すと、お兄さんが一抱えもある段ボールを、そっと手渡してくれた。先月のは、大きさの割に肩が抜けそうになる位重かったけれど、今日のはそうでもない。
「お母さん、お父さんから荷物、来たよ」
「あら、ありがとう」
リビングで本を読んでいたお母さんが顔を上げる。
「今月のは、何かな」
「さあね、何かしら。あんまりかさばらないものだと良いんだけどね」
ハサミを持ちながらお母さんが苦笑いするのにはわけがある。毎月毎月お父さんから送られてくる宅配便の置き場に、そろそろ困ってきたのは、僕とお母さんだけの秘密だ。
お母さんが器用にガムテープを切っていく。そうっとふたを広げて、あらわれた中身に、僕とお母さんは、そろって「わあっ」と驚いた声をあげた。
中に入っていたのは、ネコとリスとキツネをあわせたような、動物だった。空気がぱんぱんに詰まったビニール袋の中に丸くなって眠っている。
「宇宙の動物かなあ……」
「そうみたいね。あ、お父さんの手紙が付いてる。読んでみましょう」
白い封筒を開けて、お母さんは便せんの文章を声に出して読み始めた。
「ええと……『みなさん、お元気ですか、お父さんは元気です。今回送ったのは、宇宙のとある星で見つけた動物です。とても人懐っこく、エサはネコと一緒のもので十分です。可愛がってください。名前が決まったら教えてください』……だって」
手紙には、写真が付いていた。眼鏡をかけた男の人が、目の前で眠っている不思議な動物を抱っこして笑っている。
あ、そうか、何年も会ってないから忘れかけてた。これ、お父さんだ。
「えっと、とりあえず、袋から出せばいいのかな?」
「あ、そうね」
おっかなびっくりチワワくらいの大きさの動物を袋から取り出す。動物はまだそのまま眠っていたけれど、五分ほどすると大きなあくびをして目を開けた。ちょこんと座って、右、左、右、と物珍しげに僕とお母さんの顔を見比べた後、「キュー」と細い声で鳴く。
「わあ、かわいい」
こうして、僕たちに家族が増えた。
「はーい!」
インターホン越しに聞こえた声に、僕はハンコをもって玄関に飛び出した。
荷物の送り主は、わかっている。お父さんだ。
僕のお父さんは、宇宙で働いている。なんだか難しい研究をしていて、もう何年も地球に帰ってきていない。
その代わりに、月に一度はこうして宇宙から宅配便を送って来てくれる。中身は、宇宙のいろいろなお土産だ。
先月は、きらきら光る隕石のかけら。先々月は、古くなった宇宙船の一部。更にその前には「宇宙の空気」だなんていって、ぱんぱんに膨らんだビニール袋が送られてきたっけ。
さあ、今月は何が送られてきたんだろう。玄関のドアを開けると、いつもの宅配便のお兄さんが、にっこり笑いかけてくれた。
「はい、今月の荷物だよ」
「ありがとう」
ハンコを捺すと、お兄さんが一抱えもある段ボールを、そっと手渡してくれた。先月のは、大きさの割に肩が抜けそうになる位重かったけれど、今日のはそうでもない。
「お母さん、お父さんから荷物、来たよ」
「あら、ありがとう」
リビングで本を読んでいたお母さんが顔を上げる。
「今月のは、何かな」
「さあね、何かしら。あんまりかさばらないものだと良いんだけどね」
ハサミを持ちながらお母さんが苦笑いするのにはわけがある。毎月毎月お父さんから送られてくる宅配便の置き場に、そろそろ困ってきたのは、僕とお母さんだけの秘密だ。
お母さんが器用にガムテープを切っていく。そうっとふたを広げて、あらわれた中身に、僕とお母さんは、そろって「わあっ」と驚いた声をあげた。
中に入っていたのは、ネコとリスとキツネをあわせたような、動物だった。空気がぱんぱんに詰まったビニール袋の中に丸くなって眠っている。
「宇宙の動物かなあ……」
「そうみたいね。あ、お父さんの手紙が付いてる。読んでみましょう」
白い封筒を開けて、お母さんは便せんの文章を声に出して読み始めた。
「ええと……『みなさん、お元気ですか、お父さんは元気です。今回送ったのは、宇宙のとある星で見つけた動物です。とても人懐っこく、エサはネコと一緒のもので十分です。可愛がってください。名前が決まったら教えてください』……だって」
手紙には、写真が付いていた。眼鏡をかけた男の人が、目の前で眠っている不思議な動物を抱っこして笑っている。
あ、そうか、何年も会ってないから忘れかけてた。これ、お父さんだ。
「えっと、とりあえず、袋から出せばいいのかな?」
「あ、そうね」
おっかなびっくりチワワくらいの大きさの動物を袋から取り出す。動物はまだそのまま眠っていたけれど、五分ほどすると大きなあくびをして目を開けた。ちょこんと座って、右、左、右、と物珍しげに僕とお母さんの顔を見比べた後、「キュー」と細い声で鳴く。
「わあ、かわいい」
こうして、僕たちに家族が増えた。