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今日、見上げた空~別離は季節の終わりのように~

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 それなら、私は私として生きていくしかない。愚かな恋をしてしまった私も含めて、それが私という人間なのだから。
いつか私にもまた今度こそ本気で愛し合える男が現れるだろう。実際にそうなるかどうかは判らないけれど、少なくとも今は、そういう希望を抱いていなければ、脆く、くずおれてしまいそうだ。
 あんな男が相手だったとはいえ、やはり少なくとも私の方は本気で恋をしていたのだ-。
 終わった、どこかでもう一人の私が呟いた瞬間、その日初めて、私の眼からひとしずくの涙がこぼれ落ちた。
 うらぶれたホテルの前の路地に、どこから種でも飛んできたのか、季節外れの朝顔が一輪ひっそりと咲いている。夏という季節の終わりに懸命に咲こうとするいじらしい花が今の自分と重なり、また涙が溢れそうになる。
 月に一度、歌声喫茶が開かれる喫茶店では、親友の美千恵が私を待ってくれているはずだ。
 美千恵にこれ以上心配をかけたくないから、今は泣くだけ泣いて、お店の前に立ったら泣くのは止めよう。
 そして、マスターの淹れてくれた美味しいコーヒーにたっぷりと砂糖とミルクを入れて、ゆっくりと味わおう。きっとその身体中にひろがる温もりがささくれだった心をあたため、癒やしてくれるだろう。
 だけど、これだけは忘れたくないことがある。
 今度、恋をするときは、お互いに白昼堂々と腕を組み、微笑み合えるような誠実な男と出逢い、真夏に咲き誇る向日葵のように誰はばかることなく愛し合いたい、と。

   The end