海竜王の宮 深雪 虐殺2
「後宮に支度があるから、問題はない。」
もうひとつ問題なのは、水晶宮の次期である深雪の超常力のことだ。他のものの心を読めるので、近しいものが知れば、それは深雪にも筒抜けになる。そうなると、勝手に動き出してしまいそうだから、それも伏せておくように、簾は頼む。
「そうですね。そちらは承知しました。ですが、簾。蓮貴妃は、どうします? 」
深雪の教育係をしている蓮貴妃は、簾の懐刀だ。報せずに進められるものではないだろう、と、是稀は問い質す。
「心配には及びませんよ、義母上。蓮には報せずに、別のものたちと参ります。シユウの領域に詳しいものと、足の速いものを先行させますので。」
まずは、シユウの動向を探らねばならない。奪還となれば、蓮貴妃の力も必要だが、情報収集なら、力が借りられなくても、どうにかなる。万が一の場合は、蓮貴妃を呼び寄せれば済むことだ。
作品名:海竜王の宮 深雪 虐殺2 作家名:篠義