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海竜王の宮 深雪  虐殺1

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 今の状態では、竜体になるだけで体力を消耗してしまう。それでは、逃げることも叶わない。そんな状態では危険だから、廉も体力づくりをさせている。深雪の持つ超常力だって、使うには体力が必要な代物なのだ。今は、次期だから当代の水晶宮の主人夫婦がいる。だが、次期も、いつかは当代になる。その時に、戦えないでは竜族からも軽んじられる。ある程度は竜体で戦えて、人型でも剣技を身につけておくのは必要なことだ。
「わかるけどさ。」
「あまり過保護にしていては、深雪のためにはならんのだぞ? 叔卿。成人するまでに、なんとかしておくつもりだから。」
「わかったよ。あんま無茶してくれるなよ? 廉。」
 ずけっと叔卿が言う、と、廉も、何を、と、立ち上がりかける。そこを取り成したのは、東王父だ。
「まあまあ、叔卿殿。廉も、そうムキになってはいけない。小竜の体力は、成長すれば、自ずと身につきはするだろう。どちらも、過保護にしてはいけないよ? おまえたち、どちらも深雪バカには違いないんだからね。」
 どちらも深雪のことを案じているからの言葉だ。どっちがどっちの話ではない。そう言うと、ふたりして顔を見合わせた。そして、ニヤリと廉と叔卿は、東王父に言葉を返す。
「その言葉、そっくり、父上に献上いたします。」
「そうだよ、東王父様が一番、深雪バカだ。だいたい、はるばる崑崙から飴玉を与えに来るなんて、俺よりも酷いでしょ? 」
 そう言われて、東王父も破顔する。確かに、そうかもしれないとは思ったからだ。