ぶち猫錬金術師
シホには一生かなわない、と悔し泣きするアルベルトであった。
アルベルトとルチアの結婚式は、盛大華やかにおこなわれ、その三日後には、トマスとシホが正式に夫婦となった。
「私ね。式のときに神父さんがいう『健やかなる時も、病めるときも』って文句、好きなの」
ウェディングドレスを身に着けたシホは、満面の笑顔を浮かべる。
「そうか。俺はあんまり好きじゃないな」
「どうして。元修道士でしょ」
「だからだよ。自分が言われる立場になる、というのが、いかに苦痛か」
シホはトマスの胸に寄りかかり、
「余計なこと考えなくていいから。今日の式のことだけ考えるの。いい」
「へいへい」
すっかりシホのペースだ、と、トマスは思っていたのだろうか。
気の抜けた表情で頭をかいた。
「おめでとう、お二人さん。これお祝いの品」
李そして、アクセルとユーリも駆けつけてくれ、準備は整った。
「ありがとう、アクセル、ユーリ。私、幸せになっちゃうからね」
「あのさ、シホ」
アクセルは李やユーリと話をしているトマスには聞こえないよう、耳元で囁いた。
「もしもあいつが、お前を泣かせるようなことがあれば、そのときは、お前をさらってやるからな」
アクセルは何事もなかったかのように、ユーリのところへ歩いていく。
「もてる女は、ツライよねぇ」
シホの言動からして、まんざらではない、ということが窺えた。
アクセルの描いてくれた集合絵は、のちのレンブラント=ファン=レインの『夜警』を上回る人気だった、ということだ。
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