シナリオ『CUBE』第1幕「アウトサイド」
シーン1
孝二、電話を掛けている。相手は母親
孝二 ああ。母さん?もう今全部終わったよ。うん。そっちに遺品を持っていくよ。うん。じゃあ。・・・佳は落ち着いた? ・・・そうだよな。じゃあ、すぐ戻るよ。それじゃ。
電話を切り、部屋を見回す。そこには紙で散乱した机が置いてある。孝二、そこに座りそして、その中の紙の一枚を見て、くしゃくしゃと丸める。そして、それを部屋に向けて投げつける。
その時机の上の紙を落としてしまい、仕方なくそれを拾い集める。その時にある紙を見つける。孝二、それを見つけ、拾い、机の椅子に座って、そこにある文面を読む。
孝二 「孝二へ、お前がこれを見つけた時、僕はもういないだろう。もしかしたら、・・・いやもしかしなくてもお前は僕のことを怒るだろう。本当に、ごめん。
この手紙は孝二に宛てた手紙だ。佳にはできれば見せないでほしい。僕が彼女にした仕打ちは許されるものではないから。
僕がこの手紙を書いたのは僕が死ぬ言い訳と、死んだ時にやり残したことを、頼むため。お前に、孝二に頼むためだ。・・・」
回想シーンへ移行。雨音が強くなる。正路が箱から出てくる。両手には紙の束があり、そこには、様々な数式が書かれている。そして、孝二に気づく。
孝二 なあ、どういうことだよ。
正路 ・・・。
孝二 佳だよ! 振ったってどういうことだよ。
正路 ・・・うん。
孝二 泣きながら電話が来たんだけど。
正路 そう。
孝二 そうじゃないよ。・・・佳が自分の生徒だからか。
正路 ・・・違うよ。
孝二 じゃあ、なんで
正路 僕のエゴだ。
孝二 ・・・なんだよ、それ。意味わかんねえよ。
正路 ・・・ごめん。
孝二 ・・・俺にあやまんなよ。
正路 ごめん。
孝二 だから・・・。
正路 たぶん、これから僕はお前にひどいことを言うから。今のはその謝罪
孝二 ・・・なんだよ。
正路 孝二。頼みがある。
孝二 ・・・。
正路 支えてやってくれないか。佳を。
孝二 ・・・兄貴。次同じ言葉言ってみろ。怒るよ。
正路 孝二しかいないんだ。頼めるの。
孝二 ・・・佳の気持ち考えて言ってるのか。それ。
正路 それでもだ。
孝二 無理だ。
正路 無理なのは分かっている。だけど、おまえ以外に頼める人がいないんだ!
孝二 ・・・!
正路 頼む。
孝二 ・・・(孝二走ってはける)
正路、孝二が出て行く音が聞こえなくなるのと同時に、紙の束に向かう。そして、深い深いため息をついて、机に向かう。しかし、集中できず、頭を抱えて、そして、乱暴に紙を掴み、箱にはける。雨音が大きくなり、フェードクロスでざわめきが聞こえてくる。
作品名:シナリオ『CUBE』第1幕「アウトサイド」 作家名:katariya