forest
私が最初にそこをみた時、なんだか絵本の中から出てきたような町だと思った。
歩きながら周りを見渡すと、家はレンガ造りで、屋根の色は赤、黄、緑と様々な色なのに統一感があって、ひとつひとつの家が綺麗な色とりどりの花を飾っている。
町の人々は家の前で編み物をしていたり、畑を耕していたり、家の屋根を修理しているひとがいたり、穏やかに時が進んでいるような場所だった。
お婆ちゃんが家に来るたびに町の話を聞かせてもらっていたが、こんなにも素敵な町だとは思わなかった。
パン屋からただよってくる出来立てのパンの香りに、そういえばお昼ごはん食べてないなと考えながら、一つの店の前で立ち止まる。
"forest"
ここが、お婆ちゃんの家でありお店だ。
たしか、小さなカフェを開いていると前に教えてもらった。
他の家と同じようにレンガ造りで、屋根の色は赤色。
ドアの横には"forest"とかいてある看板があり、その下には茶色の猫が丸くなって寝ていた。
どうやらお店はあいているようで、ドアノブには"OPEN"とかかれていた。
「お婆ちゃん、ついたよー。」
ノックをしながらお婆ちゃんを呼ぶ。お店が開いているといっても初めて来た場所なのでいきなり入るのには少し抵抗があった。
ガチャリと音がしてドアノブがまわると、中から笑顔のお婆ちゃんが出てきた。
「疲れたでしょ、なにか作ってあげるから早く中に入りなさい」
お婆ちゃんの言葉に頷きながら、中に入ると落ち着いた感じの音楽が流れていて、コーヒーや焼いた卵のいい香りがした。
茶色いテーブルが5つあって、椅子が一つのテーブルに4つ。
お客さんも何人かいて、お昼ご飯を食べていたり、談笑していたり、昼寝をしていたりしていた。
部屋の奥にはキッチンがあり、そこでお婆ちゃんが何かを作っていた。
「なに作ってるの?」
近くにあった椅子に座りながら聞く。
お店がそんなに大きくないのでお婆ちゃんとの距離も近く、とても居心地の良い空間だ。
「お婆ちゃん特製オムライスよ。」
お婆ちゃんはあっという間に作った、オムライスにお婆ちゃん特製ソースをかけながら答えた。