思いこみ
「お待たせしました。クローン鮪のおつくりです」
着物姿の女性がテーブルに説明したものを置いた。
「あっ、俺はクローンビールにしたいな。お願いしますね」
「何それ、クローンビール?」
「記憶喪失か?トイレにでも行って来いよ」
アランはトイレの鏡を見て驚かされた。彼の髪の色は緑色だった。それどころか、顔に見覚えがない。アランは自分が地球人の天本信也だと思いこんでいたのかも知れないと思った。そして、ガッシュはメイアとも、アリラとも結婚していたのではないかという記憶が蘇り始めていた。この星では、重婚が当たり前だったような気もする。
席に戻ったアランは誰にともなく質問した。
「この星の名前を教えてくれないかな」
その答えは「クローン星」だった。クローン星にはクローン鮪とクローンビールがある。
「黒鮪とか、黒ビールはないのかな?」
「それはないけど、黒猫は居るわよ」
アリラはそう云ってにっこりと笑った。
了