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短歌連作 夜に笛

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変わらずにそこにいてほしかったのはウィンドウの向こうの太陽

夜だけが味方をしていた幼年期はとうに終わって夜が怖いわ

夜の中口笛を吹く少年を幻視しているわたしのベッド

わたくしを呼んでいる海がありまして花嫁にならすぐになれます

境界を超えてわたしは海へゆく あなたを無くすなんて不可能

あの夏に見つけた夏の一片が海の彼方で彼を貫く

どろどろと這い上がりつつある海を弾いた夏の光の孤独

ほらね! やっぱりわたしたち別々の人間でしかないのよ!

ひかりだけ真実であり世界でありあなたであったわたくしの恋

美しい世界のありかに手を触れる 僕の世界はただきみひとり

空を飛ぶ鳥だったよね僕たちは 夏光片は海を照らした

キッチンに向かい合わせに腰掛けて世界の全ては家族であった

もう二度と夏の光をなくさずに繋いだ手だけを信じているよ

潮風に満ちた卵がその朝に割れて彼らは夏の日のうた

繰り返しエバーアフターはやってくる 明日もアイスバーを分け合う

そうやって俺の世界が笑うからパインアメなら百個もあるよ

夏の日の人形芝居は唐突で揃いの指輪をまだ隠してる

甘やかな想い出話の続きから震える指をつなぎあわせて

トモダチはいつでもよく効くクスリです寂しい夜のカップラーメン

雪道を踏まずに行けない日々でしょう占いだけは得意なままで

僕たちの世界を壊さないために死ぬ権利さえ捧げる予定

幼子が分け与えたそのフォーチュンの四葉を散らさずおまえは行けよ

繰り返し生まれては死にまた生まれそれでも僕はあなたを許す

新しい年が来るたび思い出す選ばれなかった花の死に様

神様はいつもみていてくれるひとのことだからどこにでもいる

王様は愛を求めて微笑んでハッピーエンドはまだ先にある

ねえ、これからたくさん、大変なことばっかり、続くんだよね、終わらないんだ

まっすぐに裏切らないで行くでしょう わたしがとなりにいないとしても

あの夏のあなたの声を聞いたからわたしは夜に笛を鳴らした
作品名:短歌連作 夜に笛 作家名:哉村哉子