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シロクロモノクローム

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第七話:名前をつけるのは苦手だ



自分の名前を考える。考えてみると、とてもおかしな行為だ。
ぼくはこうである。と自分を定義づけ、そう呼んでもらう。
なんだか自分で自分の背中に、レッテルを貼るかの様な滑稽さがある。
でも、この世界ではそれが必要らしい。
そして、考えてみたら、現実でもしょっちゅうやっている事でもある。
ハンドルネーム、偽名、ニックネーム、エトセトラ。
皆自分で自分の名前をつけている。
けれど、ぼくはこういうのにはとても困るたちなのだ。
「ずいぶんと悩んでいるな。日が暮れるぞ。太陽ないけれど」
クオリアさんは頭をポリポリと掻いて、あくびをしながら言った。
「こういうのって、ちょっと苦手なんです。どうしても考え混んじゃって」
そう、ぼくは名前をつけるのが非常に苦手なのだ。
名前をつけるからには、いい名前をつけたいと思い、悩む。
でも、深く考えようとすると、なんだか頑張って考えている自分が恥ずかしくなる。
結局、ぼくのハンドルネームは、いつも匿名希望や名無しになっていた。
「そんなに悩むもんかね。どんな名前でも大丈夫なんだけれどな」
「"どんな名前でもいい"っていうのが困るんです。選択肢が多すぎるのはかえって困ります。その場から動けなくなる。クオリアさんはなんでクオリアさんなんですか?」
「ずいぶん哲学的な問いだな」
「そういう意味じゃないです。クオリアっていう名前の意味が知りたいんです」
クオリアさんはぼくを茶化した後、そうだな、といって話し始めた。
「クオリアって言うのは、ラテン語で"質"を意味する言葉なんだ」

作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景