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第二十一話：お前、笑えるんだな

クオリアさんはポカンとした顔で僕を見つめた。
「どうしたんですか？」
ぼくが気になって尋ねると、クオリアさんはこう言った。
「ナナ。お前、笑えるんだな」
「当たり前じゃないですか」
ぼくはなんだかバカにされた様な気持ちになった。何というか、赤ちゃんが初めて言葉を話したかのように、クオリアさんは言ったからだ。
「いや、そうなんだけれどさ。お前、いつもひねくれた顔してたから、笑った顔って想像できなかったんだよ」
「惚れちゃいました？」
バカ言うんじゃねえよとクオリアさんは笑う。皮肉や非難が全く混じっていない、純粋な笑顔だった。
「でも、笑っている顔の方が、いつもの顔よりかわいいと思うぞ」
「へ？」
今度はぼくが驚いてしまった。今クオリアさん、なんて言った？　自分の耳がおかしくなってしまったのだろうか。今の一瞬だけ。そう思ってしまうくらい。というかそうとしか思えない言葉だった。今まで生きてきて、これから生きていても、自分とはまったく無縁だろうと思っていた言葉だった。
ぼくは、この言葉に対して、どう反応すればいいかわからなくて、どういう返事を返せばいいのかわからなかった。あまりに青天の霹靂過ぎた。
何か言おうとして、口を開けようとしたその瞬間、空間全体を揺らす、大きな地震と地響きがぼくらを襲った。