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シロクロモノクローム

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第二話:ぼくと白い世界



ある日、ぼくは目を覚ましておどろいた。
なにもないのだ。
自分が寝ていたベッドも、
勉強していた机も、
そもそも自分の部屋も、家も、
なにもかもない。
地面もない。
空もない。
白一色の世界。

試しに自分を殴ってみる。痛い。
夢ではないみたいだ。
試しに声を出してみる。
声はエコーがかかって消えていった。
しばらくしてから、なんだか笑いがこみ上げてきた。
別におもしろいから笑っているわけじゃない。
いわゆるパニック状態ってやつ。
本当に怖くなると人間笑っちゃうんだな。
しばらく笑っていると、
「なんだてめえ。ここでなにしてる」
渋い中年男性の声が後ろから聞こえた。
振り返り、ぼくは、それをみた。
なんだかどこかのさえないマスコットキャラクターのような、
でも凶悪な表情をした、へんてこな人形を。
「おいシカトかよ。ブチ殺すぞくそが」
凶悪な顔をこの世の物とは思えないほどに歪ませ
、へんてこな人形は暴言を吐いた。
見た目はへんてこだが、いやへんてこだからか、
妙な恐ろしさがあった。
「すいません、なんか起きたらここにいたんですよ」
「は? なにいってやがるんだ、脳味噌腐ってんのか?」
「腐っていないことを願いたいですが、事実なんです」
「てめえ俺がかわいいナリしてるからって舐めてるんじゃねえのか?!」
自分で自分をかわいいって言ってるよ。という至極まっとうな意見をぼくは飲み込む。
「すいません。舐めてないんですが本当に自分でも何でここにいるのかわからないんです人形さん」
「んだとコラ!俺は人形なんてチャチなもんじゃねえ! マジでお前シメっぞ!!」
まずい会話が成り立たない。さてどうするか。
「えっと、じゃあなんてお呼びすればよろしいですか? 人形改め変な物体さん」
「変な物体って貴様本気で舐めてんだろ!!」
「失礼、じゃあお名前をお願いします」
「……ったく、俺の名前はクオリアだ。ここら辺を仕切ってる。んで、てめえはなんていうんだ?」

作品名:シロクロモノクローム 作家名:伊織千景