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はたらく死神さん

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「そだね。一回ちょっとやってみて、回収の方がよければそっちに移ってもよし。君みたいなマジメちゃんがいなくなったら整頓の方は困りそうだけどねえ」
「…そうですか、なら――」

試しに一度だけやってみます、と続けようとしたその時。

「鼎、今日の回収分全部集まったみたいなんだが。全部広間に詰めておいて大丈夫か」
ノックもなしに、派手な色の髪をしたいかにも素行の悪そうな青年が部屋に入ってきた。
いや、というか常盤――常盤悠慈(ときわ・ゆうじ)だった。

「常盤ぁ、ノックくらいしなさいっていっつも言ってなかったっけー」
白瀬さんが額に青筋を走らせている。が、外見が外見なので威圧感はほとんど無い。

「ああ悪い。で、詰めておいて大丈夫か、それとも明日にするか」
「詰めておいてオッケー。あとおまえはもっと私に敬意をはらえ」
「幼女に敬語を使うのは何か不快だから嫌だ…」
「じゃあお給金減らしておくね、常盤お兄ちゃん」
「ちょ、ちょっ!それは駄目、勘弁して、お願いします申し訳ございませんでした白瀬様」
「その態度を常時維持すると誓うのなら考えておく」
「…そりゃちょっと無理だな」
一瞬白瀬さんがものすごい顔をしたが、普段の愛らしい彼女のイメージを盛大に崩す要因となりそうだったので、瞬時に記憶から消し去った。

「あっそだ。すおー君」
「えあっ、はい?」
険悪な雰囲気の常盤と白瀬さんに気圧され呆然と立ち尽くしていたが、白瀬さんによる呼びかけで我に返る。
「魂回収の件、不本意だけどこいつと一緒にしてくれないかな」
「ハァ!? 何、なんだ鼎ソレどういう…」
「トッキーとですか?えぇーそれはちょっと」
「おいテメーもだよなんだその態度!?」
「とりあえず誰かいないことには勝手がわかんないでしょ? 他の奴でもいいだろうけど、こいつ態度はアレでも仕事はちゃんとするからねえ」

確かに慣れない初仕事に一人で出るのは心配だったし、誰か付き人を頼もうとは思っていたが――常盤となると顔が引き攣る。
「…」

「オイコラ周防なんだその顔」
「…いや……トッキー…トッキーは…ええー…」
「やっぱり嫌かなぁ。頼りになりそうなの他にいないんだよねーこれが」
「嘘つけ諌山とか藤見とか向坂とかよーもっといるだろうがマトモな奴!」
「だってあの子ら多忙だもん」
「俺だって忙しいっての!テメーの好き嫌いで選んでるだろ絶対!?」

 白瀬さんと常盤の口論をよそに、ひっそりと思案する。
諌山、藤見、向坂という名前はどれも何度か耳にしたことはあるが、実際に会ったことは無い。恐らく腕の立つ回収者なのだろう。
出会った事もない相手との仕事は出来ることならば避けたい。
――慣れない相手と、長く続かないであろう会話はしたくないし。
ここは癪だが大人しく常盤にするべきなのだろうか。 というか、その結論しか出ないのだった。
…他に選択肢は無いに等しいし、仕方がない。

「…あー、じゃあ、トッキーでいいです、いやトッキーでお願いします」
「え、ほんと?」
自分が考えている間も長々と口論していた白瀬さんがグルリとこちらを向く。
「他の人に頼むって言っても、慣れない人と組むのはちょっと、その…嫌なんで…」
「すおー君人見知りするの?へー知らなかった」
人見知りではない気がするが、まあそういうことにしておこう。

「じゃ、決まり! 明日一日すおー君たのむね常盤」
「結局俺の意思は無視か!?」
「うん、あんまり嬉しくないけどよろしく頼むよトッキー」
「クソッなんなんだ畜生、あからさまに厄介者の押し付けじゃねぇか…」
「厄介者だなんて失礼だなー俺傷付くんだけど」
「うっせぇ黙れ…あ゛ー面倒臭ェ!」

「はいっ、んじゃ明日の回収作業については常盤に聞いてねすおー君! 整理の方でもちゃんとできてたんだし、回収の方でも活躍期待してるよー」
「わかりました。出来る限り頑張ってみます」
背後で常盤がぐちぐちと文句を垂れ流していたが、あまり気にせずに白瀬さんと応対する。


「はい!じゃあ今日はこれにて君たち仕事おわりってことで!ゆっくり休んで明日に備えておいてねー」

白瀬さんの言葉を背に、常盤と自分は部屋を出るのだった。
作品名:はたらく死神さん 作家名:いどら