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八峰零時のハジマリ物語 【第二章 009】

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「作戦?」
「うん。わたしが両親に事情を説明すると……」
「……て、事情説明したの?」
「あ、うん……でも、もちろん『幽霊』のことを言ったわけじゃないよ。ただ、こんな夜中に同級生の男の子を家に入れるって言う『理由』をわたしなりに考えて……そしたら、何かあんな感じになっちゃって」
「ち、ちなみに、ご両親にはなんて言ったの?」
「えっ? べ、別に普通だよ。普通に……『今日連れてくる彼は超お金持ちな人で玉の輿を考えているの』て言っただけ、テヘッ!」
「『言っただけ、テヘッ!』じゃねーよ!」
《『言っただけ、テヘッ!』じゃねーよ!》
「きゃー! ごめんなさい~。だ、だってそれ以外に親を説得する自信なんてなかったんだよ~」
「いやいやいや……それでも年頃の娘の口から『玉の輿』なんて言われて嬉しがる両親なんていないだろう~!」
「それがいるの! それがウチの両親です!」
「なっ……!」
《なっ……!》
 俺とシッダールタはこれ以上言葉が出なかった。
「ウチの両親って昔からそういうところがあって……娘のわたしが言うのも悲しいのだけれど、中学生になってからは……」

『いいかい、利恵。これから付き合う相手を見つけるときは『お金持ちの子』にしなさい。これは命令だよ。そして、パパとママを裕福に養うように……いいね?』

「は、はは……すごい、ね」
《すごい両親だな……ある意味》
 俺とシッダールタは二人とも唖然という状態だった。
「ごめんなさい。でも、両親に怪しまれずに零時くんを部屋に入れるのはこれしかなくて……」
「別に両親が寝静まった頃に来て、窓から入ってもよかったけど……」
「ごめんなさい。ウチ、防犯セキュリティ入ってるから……たぶん、無理」
「ええええええ! す、すごいな!」
「前に強盗に入られて以来、父が防犯に力を入れるようになったの。だからこのやり方しかわたしには思いつかなくて……ごめんね、怒った?」
「あ、ううん、そ、そんなこと……ないよ」

 か、かわいいな……舞園ちゃん。
《こらこらこらこら……》
 冗談だよ。

「さて……と、じゃあ、早速始めましょうか、舞園ちゃん」
「えっ? あ、ああ、そうだね。わたしは……どうすれば……いいの?」
「そうだね。とりあえず……ベッドに寝てくれる?」
「あ、はい、わかりまし……ええっ!」

《お、おい! シッダールタ!》
 い、いやいや、だって寝てくれないと彼女の『潜在意識』が顕在化しないからだよ。誤解するなよ。

「い、いや、寝てくれないとその……『幽霊』と会話ができないから」
「あ、ああ、そうか。そうだよね。ごめんなさい、ちょっとビックリしちゃって。うん、わかった。それじゃあ寝るね」
「ああ」
「じゃあ、零時くんも……来て」

「えっ?」
《えっ?》

「な、何が?」
「だから、その……わたしの横に来て、一緒に……寝て」

「!?」
《!?》

 夜は――まだ長い。