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八峰零時のハジマリ物語 【第二章 009】

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  【009】


――夜 22:12 舞園家 前

 放課後、公園へ向かいながら歩いているときに、俺は舞園とケータイ番号とメールを交換していた。
 俺は、舞園家につき、彼女に連絡をする。
 そして、彼女の誘導に従って家の中に入る。
 すると、何と言うか――

「正面玄関」

 から入る事になった。
 しかも、そこには舞園利恵……だけじゃなく、

「舞園パパ&ママ」

 も、セットで出迎えていた。

「ようこそ、零時くん。さっ、入って」
「あ、ああ」
「いらっしゃい、零時くん。利恵のパパです」
「は、はじめまして」
「いらっしゃい、零時さん。あなたの未来の義理のママよ」

「えっ?」
《えっ?》

「ハッハッハ……まったくママはいつも早とちりだな~、『そう遠くない未来』だろ?」

「えっ?」
《えっ?》

「あらあら、わたしったら。パパの言う通りだわ」

「えっ?」
《えっ?》

「もう! パパ、ママ! なんの話してるの! まだ早いよ~!」

「えっ?」
《えっ?》

「とりあえず上がって、零時くん。わたしお茶入れてくるね。部屋は二階の奥の部屋だから先、行ってて」
「い、いいのかよ……勝手に部屋に入って?」
「構わん。わたしが許そう」
「もうパパったら零時さんに甘すぎよ。零時さんだって『オトコの子』なんですよ?」
「はっはっは。だからこそさ、ママ。『既成事実を作れ!』ということだ」
「さすがパパ! そうね、ママもそれは良いと思います」
「もうパパ、ママいい加減にして! 零時くん、こまってるでしょ! ごめんね、零時くん。さ、上がって」
「あ、ああ……」
 俺は、舞園に案内されながら階段を上がり、二階の奥にある舞園の部屋へと入った。
 舞園は、お茶を入れるべく、一旦、一階へ降りていった。

 さーて――何からつっこめばいいのやら……。

《いや、全部だろ!》
 めずらしくシッダールタがキレていた。
《何と言うか、率直に聞くが……お前、舞園と付き合っていたのか?》
「そんなことねーよ」
《だよなー。だとしたら、あの舞園パパ&ママの態度は何だ? 仮にお前と舞園が付き合っていたとしても、あれは『異常』で『異様』だぞ》
「ああ、そうだな。でも、本当に俺と舞園は今日が初対面だ。お前だって見ただろ? 朝、舞園が俺に会いにきたのを見て、高志や遊馬が驚いていたのを」
《う、うむ……だが、だとしたら何なんだ? この対応は? ワタシが学んだ人間界の年頃の男女の親の態度ではないぞ? あれは》
「ああ、確かに。舞園の両親のあの対応はちょっと異常だと思う……」
《うーむ……いや、待てよ! もしかしたら、零時くんと舞園ちゃんは、実は君が覚えていないだけで、もしかしたら昔に関係があったという可能性はどうだ?》
「えっ? いや、そんなまさか……」
《零時くん、君は昔のことを『どこまで』ちゃんと覚えてるんだい?》
「うーん、そうだな……小学一年生くらいかな、後のほうは『おぼろげ』にしか覚えてないな。でも、普通そんなもんだろう?」
《さあな。ワタシには、人間界のことだからよくわからん》
「ああ、そうか。一応、俺の記憶力は『ごく一般的』だと思う」
《そうか、だとしたら可能性の一つとしては、その『君の記憶の無い部分』で舞園さんと『関係』があったのかも知れんな》
「つまり、俺と舞園は過去に出会ってたってことか?」
《まあ、あくまで可能性さ、可能性。でないと説明つかないだろう? あの両親の対応は……》
「ま、まあな……」
《仮に、小さい頃に君たちは関係があったとしてもだ……そうだとしても、なお『舞園パパ&ママ』のあの対応の『整合性』の説明には至らないとワタシは思うけどね。そう思わないか? いくら昔……仮に君たちが小さい頃に友達同士だったとしても、年頃の男を、しかもこんな夜遅い時間に家に招くなんて、ちょっと異常だろ?》
「……確かに」
《舞園利恵……か、一体何者なんだ? 零時くん、少し警戒しておいたほうがいいぞ》
「あ、ああ」
 シッダールタは、夕方のときの浮かれた雰囲気はもうすでに無くなり、舞園利恵に対して警戒し始めたようだった。

 それにしても「舞園の部屋」……というか「女の子の部屋」という「神聖の場所」に初めて入った俺は、すごく緊張していた。
 確かに、最初のあの両親の出迎えで少し「出端を挫かれた」が、それでも、やはり、初めて入った『女の子の部屋』に俺は少しテンションが上がっていた。
 予想通りというわけではないが、『女の子の部屋』はすごく『甘い香り』がした。
 いろいろと本や雑誌とかで読んだことはあったが、本当に『女の子の部屋』って甘い香りがするんだなと知り、さらに心臓はバクバクしていた。
――しかし、そんな「ドキドキな俺」とは対照的に、シッダールタは警戒レベルを上げたままだった。すると――
「ご、ごめんなさい、待たせてしまって。これ、つまらないものだけど……」
 そう言って舞園が部屋に入ってきた。
 両手で持ったお盆の上には、コーヒーとクッキーが用意されてた。
 コーヒーのほろ苦い香りと、クッキーの甘い匂いが辺りを包んだ。
《おお! これはっ!》
「えっ?」
 そう言うと、シッダールタはまた俺と身体を勝手に入れ替わった。
《お、おい! おまえっ……》

「う、うまそうですね。食べていいですか?」
「?……う、うん。いっぱい食べて」
「本当? ありがとうっ!」
 家で食事は済ませてきてはいたが、コーヒーとクッキーの匂いが、鼻から通り脳を刺激していたらしくパクパククッキーを夢中でほうばった……シッダールタが。
《お、おい! お前、またかよ! ふざけんな!》
 もぐむぐ……うぐ、うん。らいろうぶだかば……もぐんぐ。
《……わかったよ。食ってからでいいよ》
 なんで『心の声』までモノを食べているような口調になるんだよ。
 つまり、シッダールタは『食べ終わるまでは会話をする気はない』と言っているつもりなのだ。
 どうせ、こいつに何を言っても言うことを聞かないだろう。理由は、こうやって身体を自分のタイミングで入れ替えることができるのは『シッダールタ』にしかできないからだ。
 それをされると正直、俺としてはどうしようもない。
 ちくしょう。

「ごちそう様でした」
「お粗末さまでした」
「では、おやすみなさい」

《何でだよ!》
 零時、ナイス突っ込み(シッダールタの心の声)
《俺につっこませんな!》

「クスクス……もう! 零時くんっておもしろいね。何だかイメージと違う……」
「えっ? そ、そう?」
「うん。昔はそうでもなかったけど、中学からは何だか近づきにくいオーラがあったから……」
「ああ。ははっ、いや~バカだよね、俺(零時)って」
《この野郎》
「ところでさ、舞園……」
「何っ?」
「さすがにスルーすることなんてできないので今のうちに聞かせて欲しいんだけど……どうして夜のこんな時間から年頃の男である俺を、舞園の両親はあんなに快く出迎えたりなんかしたの?」
「えっ?」
 一瞬――場の空気が止まった。
 しかし、次の瞬間……、
「あははは、ごめんね、零時くん」
「えっ? えっ?」
《な、何だ? 》
「実はアレ……作戦なの」