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SonnyClark・『Somethin'Special』
三宅はあまりjazzに詳しくない。聴くのは「うどんの次に好き」らしいのだが、なんだかよくわからないのだという。つまりjazzのなんたるか…それは蘊蓄だとか定番だとかを指しているのだと思われる…が全然わからないのだ。そんなこと言われたら僕だってよくわからないのだが。
そんな三宅が唯一持っているjazzのアルバムがある。SonnyClarkのTheBlueNoteYearsだ。彼女曰く「私サックスが一番好きなんだよねー。なんか渋いおっさんの声みたいで」というよくわからない評価から「けっこーサックスが多い」このアルバムを選んだのだそうだ。
そのくせ彼女はjazzjazzした曲(?)ではなく12曲めに入ってるSomethin'Specialばかり聞いている。
でも、この曲を聴くとちょっと面白くて僕はいつも少し笑ってしまう。
「なんでこれが一番好きなの」
彼女がダダダと11曲とばして流し始めたSomethin'Specialを聴きながら僕はついにそう尋ねた。三宅は珈琲を飲みつつ紙粘土で作る動物の設計図を描いている。彼女は紙粘土をいじくるのが趣味なのだ。
「なんかさー」三宅はうす黄色の色鉛筆のおしりで頭をぽりぽり掻いた。
「うん」
「スパイっぽくない?ハードボイルド探偵なかんじ」
僕はスパイと探偵はまったく別物じゃないかと思ったが黙っていた。なんとなくわからんでもないと思ってしまったからだ。
やはり5年も一緒にいると感化されるらしい。そんな三宅も、僕がよく聴くAnitaO'Dayをあの下手くそな鼻歌でうたうまでにはなったのだけれど。