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パワーガール

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朝の混み合った電車内。通勤と通学のラッシュの時間。夏の電車なんて最悪だ。冷房なんて意味がない。肌がひっついて気持ち悪い。こんな電車いつもなら乗らない。けど、今日は仕方ない。依頼のためだ。辺りを見回す。もうすぐ駅につく。あ、発見、あいつか。確かにタチの悪そうな顔してるなー。
そのタチの悪い顔の前には女性が立っている。その女性が私の方をじっと見ている。ロングヘアーを一つにまとめたOL風。ケータイで写真を確認し私は動き始めた。
「間も無く、淀屋橋、淀屋橋でございます。」アナウンスが流れた。周りが降りる準備をし出している。そして、降りそうな雰囲気を出している乗客のスペースを狙おうと降りない乗客も体制を整える。朝の電車は戦争だな、そう思った。
淀屋橋に着き、車内から大量の人が吐き出されている。ごった返し状態でみんな乗り継ぎのため足早にホームを抜けて行く。危ねえー、標的見失ったらどうしてくれるんよ!一人憤慨しながら一目散に私は走り出した。そして、「おい、おっさん。あんた痴漢してたろ?あたし、見ちゃったんだよねー。あの、一つに束ねた女の人触ってたやろ?」と、タチの悪い顔の腕をつかんで声を張り上げた。目の前のおっさんは焦りと動揺で目がウロウロしてる。「な、なんのことだか…」「しらばっくれんじゃねーよ、駅員さーん!この人痴漢ですー!」おっさんはパニック状態。「駅員なんて呼ばないでくれよ。今から出勤なんだよ。謝るから!謝るから勘弁してくれよ。」「お?おっさんが痴漢って認めたな?」それでも、あたしはおっさんの腕を離さない。OL風のお姉さんは黙って見ているが顔色が悪い。しかし、その目には火がついていた。おっさんがごねている間に駅員さんがやってきた。「どうされましたか?」「このおっさんがねー、朝のラッシュをいいことに痴漢してたんですよ。」「本当ですか?すいませんが、少しお時間よろしいでしょうか?」おっさんはうな垂れている。ブツブツと会社が…とか家庭もあるのに…と呟いている。こりゃ終わったな、とあたしは思った。まあ見た感じ本当に反省しているようだし駅員がきても痴漢を否定しない。「あなたもお時間ありますか?」駅員がOL風のお姉さんに声をかけていた。「はい、私は大丈夫です。それに被害者ですから。」そう強い口調で言った。「この人、最近車内でずっと私の近くに立ってたんです。気持ち悪いなと思っていたら触り出して…。」「いつからですか?」「3日前くらいからです。」「そうですか、それでは失礼ではありますが、場所を変えてもう少し詳しく教えていただけたらありがたいです。」と駅員はいい、おっさんが青ざめた顔で駅員に連れられて行った。駅員があたしに、「あなたもお時間ありますか?」と聞いてきたが、「私はこのあとどうしても遅刻出来ない用事があるのですいません。お姉さんに後は任せます。私はあくまで発見してつい我慢出来なくて声を出しただけですから。」「分かりました。では、お名前と連絡先だけお願いします。」「私の名前は鈴原リルハです。」これが、あたしの名前。リルハってちなみに、ちゃんと本名だから。「ありがとうございます。あなたみたいな人がたくさんいたら検挙率も上がるのですが、朝は皆さん急がれていますからこうやって声をあげてくれて私たちもありがたいです。お手間をかけて申し訳ありませんでした。また、後ほど連絡させていただくことになると思います。それでは、失礼します。」あたしみたいなのがうじゃうじゃいたら逆にうるさくて仕方ないだろうな、と思わず苦笑した。駅員が立ち去った。さ、今日の依頼はこれにて終了。スタバの新作飲みに行くか。これが、あたしのどうしても遅刻出来ない用事。え?おかしい?だって後の事まで面倒見てたらいつまでたっても終わらんからね。

あたし、鈴原リルハ。珍しい名前だからみんな一発で覚えてくれる。響きが良いからってつけてくれた母に感謝。ショートカットで今はパーマを当てている。昔はロングだったんだけど、いっかいショートにするとロングなんて無理。身長170cm、体重、内緒。俗にいうモデル体系。みんなからうらやましがられるけど、どんなけ食べても太らない体質。マジ最高。そして、あたしは何でも屋と呼ばれている。手先が器用、頭もそこそこ回る、体力にも自信がある。友達の相談に乗って助けてたらいつの間にか噂が回るようになり、「何でも屋リルハ」になっていた。どこから聞きつけてくるのかあたしに会いたがる人は多い。内容は様々。今日の痴漢退治だったり、浮気がどうとか喧嘩がどうとかそういうもつれとか、日常でよくあるけど、本人にとっては辛い悩み。それをあたしは解消する。解消できなかったとしても軽減はする。だって、しんどい思いして生きてたら楽しくないもん。でも、おせっかいはしない。偽善者ぶりたくないから。だから、助けるのは依頼があった時だけ。他は知らない。依頼成功の報酬は食事をご馳走してもらう。それだけ。どんなジャンルでも良し、値段も何でも良し。それが余計に依頼しやすくしてるのかもね。だって、食べることほど人生の中で幸せなことってないじゃん!
とまあ、自己紹介はこんな感じで。後は自分たちであたしがどういう子なのか知っていってね。

スタバの新作を堪能してからあたしは学校へ向かった。暑い日はやっぱりフラペチーノが一番。今日は授業が昼からだから普段はまだ寝てる時間だけど、依頼があったから朝早く起きた。たまには早起きもしてみるもんだね。おかげでこうして、フラペチーノが飲める。「ういーっす、おはよー!」あたしは元気よくクラスのドアを開けた。「リルハおはよう。今日早いやん。あ、もしかして依頼やった?」「そ、今日は痴漢撃退、悪霊は去りました。めでたしめでたし。」「リルハさすが!」この子は亜樹。ロングヘアーを暑そうにかき上げている。あたしが一番仲がいい子。亜樹はかなりの美人さんで男女問わずモテモテ。友達としてあたしも鼻が高いよ。「で、報酬は?依頼者どんな人やったの?」「んー、淀屋橋のオフィス街で働くOLさん。綺麗やったよ、報酬はまだ連絡きてないから分からないけど美味しいものご馳走してくれたらいいなー。」「リルハはほんま、食い意地はってるよな。それで太らんのが奇跡やで?私がこの体型を保つために日々どんなけ努力してるか…」「生まれ方は選べんからね、妬むならあたしの親を妬むんだな。」そう言いながらケータイをチェック。新着メールが一件、相手は今日の依頼者だった。今日の夕方心斎橋大丸の前で待ち合わせでどうかとの内容。了解を告げてケータイを閉まった。
作品名:パワーガール 作家名:リサ